腐りゆく天使、崩れゆく精神(こころ)、壊れゆく朔太郎…と言った所か。
最終章の朔太郎の手紙は圧巻だった。「手紙魔」…う~ん、まさに。
もっと「朔太郎」について調べてから読み直したら、二度おいしい作品だろう。
でも私は、白秋の詩のほうが好きなんだけどね(笑)。
作中、詩人とは言葉の狩人であるとの定義は言い得て妙。ある言葉を餌に、形のないものを招き寄せ、絡めとって表現という檻に入れるという概念は、「陰陽師」シリーズでいうところの「呪」に他ならないのでは。
学校時代に触れたきりの朔太郎の世界には、正直違和感しか覚えなかった記憶があります。読み解く者に、共感を含む感受性が伴わなければ理解する事は能わなかったのかもしれません。こうして時を経た後に再びまみえてみて、多少は理解が出来るようになったのでしょうか。例えフィクション部分があろうとも、こうしたリンク部分を私たちに現してくれるという世界観の提示こそが、小説の楽しみだと思います。
巧みに用いられている書簡をはじめとして、作者の力量にあらためて拍手の一作です。
氏の作品群を伏線の一種と考えれば、物語は新たなる地平を目指しうるのかも知れません。
ご一読を!
神々の山麓と並んで、脱伝奇の新生夢枕獏の代表作に、間違いなくなります。
読もう。