デーモン・アルバーンのソロ・プロジェクト、ゴリラズのド派手ポップと実にエモーショナルな前作『13』に続いての新作は、ソウルフルで微妙な味わいの1枚。ブラーらしいロックナンバーも2曲用意されている。「Crazy Beat」はノリノリの定番「Song 2」を思わせるし、「We've Got A File On You」は短いながら出来が良く、扇動的なパンクバンド、クラスがモロッコの蛇使いと喧嘩しているかのよう。
とはいえ変わった点もやはりある。デーモン・アルバーンのメロディセンスは健在だが、コクソンの破壊的なギターがないせいか『Think Tank』は別のバンドのような印象を与える。モロッコでのレコーディングとデーモンのマリ音楽への傾倒がブラーに変化をもたらした。「Caravan」ではらくだのペースのようなスローリズム、「Gene by Gene」では砂漠を連想させるかのようなクロスリズムと意表を突くサウンドが使われている。今のブラーは正統派ロックではなく自分たち独自の音楽を追及しているようだ。進化しすぎてついていけないと思うファンもいるだろうが、ありのままのブラー、つまり変化し続ける彼らを受け入れることのできるファンには、この『Think Tank』は聴きごたえ十分の1枚だ。(Caroline Butler, Amazon.co.uk)