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アーロン収容所 (中公文庫)

価格: ¥600
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論社
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捕虜が見た支配者と被支配者の構造 ★★★★★
いわゆる体験記。イギリスの残虐性ばかり書かれている本かと思ったがさにあらず。各国民の性質に鋭く切り込み、それでいてユーモアも忘れない。ぐいぐい引き込まれるパワーのある良書だ。

イギリスといえば紳士の国だが紳士とは具体的には何か?本書を読んでそれは「支配者としての人格」だと感じた。約束は必ず守る、冷徹な合理性、そして何より自分を絶対者として疑わない悠然たる態度。そういった性質が彼らを世界の支配者に押し上げた。自分の行動を国家の誇りに直結し、祖国愛がそのまま戦意に変わる。著者はそれと長いものには巻かれろ式の日本を較べ嘆息している。

またビルマ人の良さにも多く言及している。日本は彼らにひどいこともしたのに彼らは日本にほとんど絶対的に好意的だ。著者は仏教の諸行無常、物に執着しない考えが国民隅々まで浸透しているせいだと考察している。貧しくとも毎日楽しそうに生きている彼らの人生の秘訣はこの辺りにあるのかもしれない。

時が流れても国民性はそう変わるものではない。それが本書が全く古く感じなかった要因だろう。
おそらく稀有な本 ★★★★★
イギリス将校達の日本人への振る舞いから、西洋史研究家の著者はその根底にある民族性に分析を加える。
戦時下(戦後処理下)の収容所という特殊な状況の話。
なので一般化できないとも言えるし、逆に本性が出てるとも言える。

「アングロサクソンもモンゴロイドも同じ人間だぜ!」と思う方は信用しなければいいですし
「そうは言っても、民族性の違いはあるはずだ!」と思う方はフムフムと頷けばいいと思う。

ただ、どちらが民族として優れているかという話をしているのではない、ということは留意したほうがいいです。
この点を曲解した人が本書を引用することもあるので。
もはや戦後ではない??? ★★★☆☆
“西欧ヒューマニズムの限界”という刺激的な副題の通り、ヒューマニズムはあくまで人間とみなすものに対してのみ適用される、ということを再確認。

だが私がこの本で感じたのは捕虜生活が結構楽しそうだ、ということだった。インド兵、グルカ兵、現地のビルマ人が片言の英語、日本語、ビルマ語を混じえて会話し、タバコが通貨の代わりになる。麻雀する。牌は自分たちで作る。演劇小屋も作る。材料はどこかからか工面し、かなり本格的。女形もいるしカツラも作る。パラシュートで衣装を作る。その劇をインド兵士官が奥さん同伴で見に来る。ヴァイオリンなどを作って楽団もできる。椰子酒で酔っ払う。本も出版する。まんじゅう屋もできる。そして何より現地の人が日本兵捕虜に対してかなり好意的だったようでそれが嬉しい。もちろんそれらは過酷な強制労働下の束の間の楽しみではあるのだが・・・

“もはや戦後ではない”とは誰のセリフだっただろうか。未だ日本はGHQによって作られた?アメリカの価値観の中で路頭に迷い、出口があることすら認識できていないのではないか。少なくとも私は戦前・戦中の日本、イギリスを始めとした西欧世界に対する見方が少し変わった。
日本人批判があるから冴える英国人批判 ★★★★★
 ビルマ戦経験者の体験記は幾つか読んできたが、多くは限りなく自主出版のもので書き手の文章力や編集に難があり、陸軍の無謀な作戦や上官への恨み、亡くなった戦友への思いは伝わるものの、読みやすいものは案外少なかったことを覚えている。その点、この本は西洋ヒューマニズムの限界と集団としての日本人のダメなところを、一兵卒の体験を通して淡々と描いた名著だと言える。

 この本が警鐘を試みた、日本人に無意識的に植え付けられている白人コンプレックスと西欧ヒューマニズムを相対化することは、本当は本を読んだだけでは不可能であり、読者各々が体験を通してしか理解できないものだろう。だが、活字で理解できる範囲のことは、この文庫を通して僕らは十分感じることができると思う。

 また、この著者の説得力は、西欧批判と日本人批判を並行して行っているところにある。会計上、在庫分を残したいという役人根性から戦地の物資配給を極限まで絞った挙句、降伏後は率先して英国軍に奉仕する主計部会計係。現地在留民間邦人まで徴兵して戦死を強要し、自分は飛行機で脱出した陸軍大将。ビルマ在留捕虜は手厚く扱っているという全く反対の英国情報を鵜呑みにする外務官僚と政治家(英国通の吉田茂!)。その間違った現地情報を報道するマスコミ。そして、戦後すぐ始まった国民あげての西欧礼賛。。

 戦史を読んでいつも感じるのは、未だ変わらない「集団としての日本人」のダメなところだ。是非、続編も読んでみたい。
文句なしの名著 ★★★★★
太平洋戦争終了時にビルマのイギリス軍収容所にいた著者のお話。
収容所以外にも戦時中のことについても書かれています。

まず第一に思ったことが、文章がしっかりしているということ。
京都大学卒のエリート(戦後は京都大学の教授)だったということもあるのだけれど、
戦時中・捕虜中のことをここまで鮮明に書き綴ることができるのは尊敬に値します。

著者の原体験が下になっているので説得力があります。
巷に溢れている、他人のデータを基にして自分勝手に論理展開している本とは比較になりません。
イギリス人・インド人・グルカ兵(ネパール)・ビルマ人、そして日本人。
登場人種が多種多様で各々に特徴があるのが大変興味深いです。

今後ボーダーレスの時代を迎えるにあたり、日本人という枠組みが少しずつ緩くなってくる中、
半世紀程前にそれに似た状況を経験している著者の声に耳を傾けておくことは、
決して損ではないと思います。

ユーモアも混じりながらの本著、決して肩肘張って読むものではありません。
文句なしの名著、☆5つです。