西欧人の行動様式を聖書をもとに解明しようとする試みは独創的であり、好感が持てます。また、ある程度、整合の取れた説明も出来ているので、それなりに読み応えがあります。日本人が理解しにくいアメリカ人の思想をも簡単に説明した文には感銘すら受けます。
ただ、難を言いますと、聖書を基本としているのでアメリカとヨーロッパを一くくりにしているのですが、イラク戦争に対する各国の反応を考え合わせると、プロテスタントという同じ土壌でも異なった対応が取られており、この理論に完全に納得してしまうのも危険かと思う所です。
一つの見方を提供してくれていると理解した方が良いかもしれません。
最初に「もう聖書を知らないでは済まされませんよ」と語りだし、「何しろ聖書は深遠なものだから、ちょっとやそっとでわかるはずはないのだぞ」と印象付け(特に30~32ページ付近)、そしてかなり独断的な内容が華やかに展開される ― 各種宗教団体も見習いたくなるような手法であります。
偏っているからダメと断ずるつもりはありません。こういう本は、特定宗教団体や特定出版社から数多く出ています。これが好きな人もいるかも知れません。ただ、一般読者向けの「聖書入門」としてはあまりにも独断的で水準も低いというだけです。星二つは、その「トンデモ本」度に敬意を表したものです。
聖書の本質、書かれた歴史的背景、また最終章には現代日本が持った宗教的/形而学上の問題点が書かれており、やや難解な個所もありますが、聖書を再読しようと思われる方の入門書としてはうってつけのものかと・・・。
200年以上もかけて編纂された聖書を読むには「努力」が必要であることを教えてくれる1冊です。