幼いということの痛々しさと、青春のもつ不安定な危うさ
★★★★☆
『COMICアレ!』(マガジンハウス)で1996年に連載され、マガジンハウスから1997年に刊行された単行本の再刊本。装丁も青い。
正直言うと、あまり期待しないで読み始めたのだが、途中からグングン惹き込まれてしまった。
日本海に面した田舎の街の女子高を舞台にしたお話。連載されていたのは1996年だが、作者の年齢と、物語に登場するちょっとした小道具(レコードやカセットテープ)を考えると、80年代後半から90年代にかかる頃の話なのだと思う。(女子高の)同級生に恋してしまった主人公の女のコ(作者の分身?)の高校3年の1年間の揺れる心情を坦々と描いている。切ない、というか、苦しい、というか…。幼いということの痛々しさが非常にうまく表現されていると思う。ちなみに、著者初の長編だそうだ(長編と言っても、たった10話に過ぎないが。しかも1話が短い)。
この人の漫画を読んだのは初めて。何というかガロ的だなぁと思っていたら、本当に『ガロ』でデビューした人だった。ほとんど背景を描かず、露出オーバー気味でコントラストを高めた絵柄が、青春のもつ不安定な危うさをうまく表現しているような気がする。動きの描写はほとんどなく、影絵のような印象。静寂に支配された世界。どうも現実感がなく、おそらくは作者自身の想い出を抽象化して描いたものなのだろうと思う。
独特の雰囲気のある作品で…、漫画であることが不思議な気がした。通常の漫画同様、フキダシが描いてあってその中に台詞が印刷されているのだが、何故か違和感がある。台詞が音声として聞こえてくるべきもののように感じた。
多才な才能を秘めた作者のようで、面白い人を見つけたと思う。