システム作りのプロセスの中で、”顧客”から要件を引き出し整理する最初のフェーズには、あいまいさが付きまといます。ある程度客観的に表現された「要求仕様」を作成するには、主観客観の入り混じった状態から人間がさまざまなコミュニケーションで引き出すしかないのです。このフェーズと、コンピュータに実装するフェーズでは、要求されるスキルがまるきり違います。
型どおりの要件定義手法を学んでも、実際に自分で人間を相手に行ってみて現実の不可解さを感じることでしょう。その時に読むと身になる本だと思います。予習で読む本ではありません。また、経験の中ででてくる悩みにもいろいろな段階があるので、何章がそのときの自分に役立つかは違ってくるかもしれません。
冗長に感じる部分もありました。あるテーマでだされる例を読んでも意味が受け取れない部分もありました。しかし、評判も高いようなので、とにかく一度、多少意味の理解できないところがでてきても我慢しながら読み通してしまいました。著者が埋め込んだ含蓄ある表現、事例の全ては吸収できなかったと思います。現実で違う悩みを持ったときに繰り返して読むと違う発見があるように思います。その場合、1度目であれば読むスピードから考えて翻訳された本書を読むのがいいとおもいますが、2度目に読むなら英文で読むことも考えていいかもしれないと思います。こなれていない訳語が散見され、原文の表現は何だったのかな、と何度か思いました。