まずこのジャケットアートの素晴らしさ、そして
My Faunny Valentineのアレンジワーク。凄いです。
これだけで永遠の名作、聴き次がれて行くに相応しい
盤ですね。言い尽くされている盤ですが、言わずには
おれない吸い寄せられる様な気品がありますね。
LaFaroを亡くして、完成された三位一体のトリオ演奏
を一からやり直さなければならなくなったEvans。
絶頂から奈落に落ちた様な気持ちだったでしょう。
そして出会ったJim Hall、好敵手です。
Evans燃えに燃えています。Duoでも自分のインタープレイ
を試せる相手です。名盤になる訳です。
二人の造り上げる楽曲の陰影美、造形の様に曲を彫り上げて
形にして行きます。
痺れる様な青白い炎が陰影を照らします。

個人的には、Waltz for Debbyよりも楽しませてもらっている。
いつ聴いても心の隙間にに滑り込んでくる。
昼よりは夜に合うのであろうが・・・

アルバム一枚を通して一曲、という印象。
聴きすぎて飽きないか心配していたが、
飽きる気配は全くない。

時代を感じさせないセンスあるジャケット、統一感のある選曲、エヴァンスさんのピアノ演奏は聴いてて疲れるのでいつも聞くわけではないのですが、たまに聞きたくなり棚からCDを引っ張り出します。このアルバムに限って言うとギターが邪魔。うるさい。ギターを消したヴァージョンを出してほしいくらいです。

こんなにも盤中に詰まった音楽の世界観を的確に表現したジャケットは珍しい。
このモノクローム色と冷たい水中に浮遊する女性が全てを表していると言ったら過言だろうか。

他のレビュア様のご指摘通り、ビル・エヴァンスのピアノとジム・ホールのギターだけで構成された
音楽。冒頭「マイ・ファニー・バレンタイン」の独自色の強い解釈が際立って採り上げられがちの作
品だが、残りの曲は極めて叙情性の強いバラード中心の構成となっており、二人の織り成す美しい
旋律が堪能できる。これだけ音数少なく、ゆったりした構成だと普通は聴き手が途中で飽きてくるの
だが、テンポを落とした曲群でさえ二人の演奏の緊迫感が緩むことは無く、どこまでも聴き手を惹
きつけて離さない所が凄い。

人によって思い入れある曲は異なるだろうが、自分にとって忘れられないのが3曲目の「ドリーム・
ジプシー」である。冒頭エヴァンスの実に慎ましく儚げな旋律が流れる部分から、聴き手は既に夢
心地になる。そこに、テクニカルだが曲全体の静けさを壊すことの無いホールの絶妙なギターが絡
み、実に美しい二重唱のワルツを奏でる。ピアノとギターのひんやりとした感触の曇った音色は共
にジャケットのモノクローム色であり、お互いの演奏に主張が全く無いわけでは無いにも関わらず
、2つの音が絶妙に溶け合っている為に、曲自体の旋律の美しさがより際立つ。

他にも冒頭の滑るようなピアノの旋律が印象的なワルツ「スケイティング・イン・セントラルパーク」、
途中から挿入されるホールの消えゆくようだが味わい深い旋律が堪能出来る「ダーン・ザット・ドリー
ム」等、この作品に捨て曲など一つも無い。

巷の供給過剰な煩い音楽に疲れた時、夜寝る前にそっとこの珠玉の作品に耳を傾けて欲しい。
きっと心地良い夢の世界に導いてくれるはずである。

ビルエバンスは圧縮処理していつも車で聞いています。ふっと引き込まれ視界が途切れそうな気分の時は，これがかかっている時。理屈や背景を知ることは曲や演奏を深く知る要素だと認めた上で，無心に聴く楽しみを与えてくれる一枚です。