素粒子論の発展に寄せる希望に好感
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理論物理学者による一般読者向けの最新宇宙論として非常に読みやすく、且つアインシュタインの相対性理論発表以降100年の宇宙論史の概観もバランス良く見渡しており、宇宙論の入門書としても適している。何より、未だその存在が実証されていないダークマター・ダークエネルギーの存在について、賛否両論を併記しており、一方的な視点を読者に強いない客観性は好感が持てる。まだ若手の研究者である著者は今後の素粒子論の発展に大きな希望を抱いており、若さ故とも言えるその楽観を自覚もしている様子だけれど、巻末で示されたSF的な未来展望を著者と一緒に見届けたい思いに駆られる。
日常からかけ離れた知的冒険の書
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知人から紹介されて読んでみましたが、「宇宙物理は難しい」という第一印象を見事に裏切ってくれました(実際は難しいのでしょうけど…)。
ゆっくり読んでもよくわからない個所もありましたが、それ以上に新しい発見がたくさんあって早く次を読みたいという一心で読み進めました。たとえば、「原子核の中は予想以上にすかすか」とか「地球などの惑星も宇宙レベルで観ると量子的なふるまいをする」とか「中性子を構成する素粒子に電子がある」とかです。物理・化学の知識が高校1年レベルで止まっている私には、知らなかったことばかりで驚きの連続。
ダークマターや素粒子の本を読んで勉強してから再度挑戦したいと思います。
面白いしわかりやすい
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物理学者が一般向けに書いた書籍は大抵面白いが、これもまたしかり。
あなたが純文学好きでも、すんなり入っていけます。
特に専門知識はいりません。日本語が理解できれば十分楽しめます。
たまに宇宙のことを考えるのは楽しいな、と思える本。
あ、中性子星の重さにびっくりしました。もうギャグとしか思えない重さでした。
理論から迫る「見えない」世界
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最近の観測技術の向上に伴って、次々と新たな知見が集まる天文分野だが、理論面での進展も見逃すわけには行かない。特に2008年は、理論物理の分野で日本人のノーベル賞受賞者が注目された。だが、ますます細分化、専門化する理論物理についてわかりやすく最新の話をまとめた一般書はなかなかない。
本書では、ダークマターとダークエネルギーをキーワードに、最新の物理理論分野についてわかりやすく構成された一般向け科学書。ダークマターなどは、言葉だけが独り歩きしてしまって、いまや多くの素人でも知っていようが、ダークエネルギーについては初耳の方も多いのではないだろうか。我々の存在しているこの宇宙で、(少なくとも現時点で)「観測できる」物質はほんの数パーセントで、ほとんどはダークエネルギーと言う未知の物質(物質かどうかも議論の分かれるところ)で構成されている。これだけ書くとなにやらオカルトめいた感じもするが、これは実際の実験観測データに基づく理論的な結論であって、厳然たる事実である。
ダークエネルギーとは一体なんなのか? 現時点では全く手探りの状態であるが、それでもいくつかの候補は挙げられている。そのダークエネルギーのストーリーを中心に、量子理論の解説から始まり、ひも理論、素粒子の話が丁寧にわかりやすく展開される。特に本書では、全ての物質には対になるものが存在すると言う、超対照性に焦点を当てた記述が豊富で、これは他書には見られない興味深い内容であった。
扱っている内容、そして結論は専門的でかつ最新。だが、若手の研究者が執筆したと言うこともあり、要所要所挑戦的な語り口もあいまって、刺激的でかつ読みやすい。今後の宇宙論の行方が楽しみになる一冊。
新しいパラダイムへ
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技術の進歩は人間生活を便利にするだけでなく、人間の考え方の根本を変えてしまうこともある。それは現実の世界が私たちの信じたい世界とはまったく別のものであることを少しずつ受け入れていくことでもあるのだ。