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人間が幸福になる経済とは何か

価格: ¥1,944
カテゴリ: 単行本
ブランド: 徳間書店
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「トリクルダウン」を誰もが信じていた頃に書かれた反対論 ★★★★★
個人的には情報の非対象が存在するところに利益が生まれると思います。しかし、こうした情報の非対称性(スティグリッツ教授の専門)が1)先進国と後進国2)機関投資家と個人投資家3)富裕層とワーキングプアなど大規模に拡大され、しかもフィックスされてしまうと暴力的に解決されるしかなくなり、社会は不安定さを増して、成長も阻害されるというのが、最近のスティグリッツ教授の主張。

 グローバリズムに対して、エスタブリッシュメントの側から厳しい批判を行ってきたスティグリッツ教授のこの本は、Roaring Twentiesになぞらえられた原題"Roaring Nineties"の題名通り、90年代に起こったエンロンやワールドコムの破綻について情報を持っている者が、持たざる者を騙したことにつきる、という単純明快なことを解き明かしています。そして、こうした事態がおきるから過度の規制緩和は問題なのであって、政府の果たすべき役割というのはちゃんとある、として《金融部門にたいする適切な規制や競争の促進や環境保護の手を打たず、基本的なセーフティネットを提供しないと、経済は悪化するのである》(p.384)という処方箋を書いています。
狂騒の米90年代〜グローバリズムにモラルを吹き込むことができるか ★★★★★
 市場経済が前提としない「個人によって情報や知識に差がある」という当たり前のことを経済学的に証明したことで知られる本格派の経済学者による経済社会批判。
 複雑化した企業会計が普通の経営者に不正を働かせる「インセンティブ」となっていることを告発する。衝撃的な前著で明らかにされたアメリカ自身の問題をさらに追究し、不況時にリストラと財政再建を迫るような押し付けられたグローバリズムが悲惨なら、「企業に融資をして事業を拡大させ、雇用を創出させる」本来の役割を担わなくなった銀行、「企業重役は不用心な株主からお金を盗んでいる」(160頁)、「弁護士はつねに金持ちを探す」(177頁)、「誰もが自分の金を奪いにくる者から・・・自分を守ろうと努力して」(226頁)いる社会が如何に悲惨であったかを説く。問題は回復されるべきモラルが、経済の内部の市場そのものにより実現されるのか、市場の外、あるいは経済の外まで含まねば回復されないのか、見極め切れていないことにあるようだ。
90年代のアメリカ経済を総括する書 ★★★☆☆
実は経済のことはよく判らないので、グローバルな視点を持ちたいと思って
手にしたのですが、より混乱してしまいました。
アメリカの経済施策を司る省、機関と企業、裕福層とのパワーポリティクスと
採った政策とその結果が著者の意向とともに並べられています。
私のような経済の不案内人にとっては親切ではないので、読みにくさが
残るかも知れません。
ただし、アメリカのわがままぶりの発揮を知るには良い書だと思います。
更にはこの書から読み取れる部分から導き出される現在の日本が進もうと
している方向の不安点なども素人ながら炙り出すことができると思います。
人間が幸福になる経済とは何か ★★☆☆☆
本著は前著「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」を読んだ者からすると「焼き直し」の感が否めない。また(おそらく翻訳のせいであろうが)、段落内で文意に一貫性が見られない部分が少なからずあり、特に前半は、読み進めるのにストレスを感じる。

本著は記載されているとおり、明らかに経済学的な領域を越えた議論を展開している。本書の大部分を割いて、政府の役割、ウォール街の人々の行動等が実体経済に与えた(であろう)影響を記載している。それ自体は悪いことでは決してないが、原因となった事象と結果を言葉のみで説明しているため、どのような過程を経たのか、また、経済指標で表すとどういうことなのかよくわからない。例をあげると、クリントン政権が実現した増税による財政再建がある。通常増税は景気を冷やし、結果的に財政再建を実現できないことが多いが、なぜ実現できたのかという経済学的に見て極めて重要な点の説明がほとんどない。

悪く言えば、経済学的な議論をあえて超越(するかのように)して、実証的な分析を回避したともとれなくもない。

確かに ★★★★☆
この本を読んで、自分が日々直観的に感じている事が概ね正しそうだという事が分かりました。

キーメッセージは「政府も市場もいずれも完全ではない。それぞれの限界と役割があり、それらを理解した上でバランスの取れた政治を行う事が肝要である。失業率は 単なる数字ではなく本当に不幸に見舞われている人々が存在する事を忘れてはいけない。完全雇用を実現し、かつインフレを回避する政策は複数存在する。最貧困層を見捨てれば、そのような社会は大きなコストを負担する事になる。集団行動は必要で利己的な野心は個人・国家いずれのレベルでも規制されなければならない」、等 少々難解な感は否めませんが良く分かりました。

また、米国政府が非常に利己的で自国の富裕層の利益しか考えておらず、それを欺瞞で押し隠し、他国の利益になると信じ込ませて破壊的な米国主導のグローバリゼーションを実行してきた事も良く分かりました。
一読の価値 有りと思います。