形がどうであれ、スティーヴン・キングの作品には読者を引き込む魔力がある。著者自身が独特の魔力を持っているからであろう。テレビ世代初の人気作家であるキングは、処女小説『Carrie』(邦題『キャリー』)を1974年、ベトナムから最後の米軍が撤退する前年に出版した。かの戦争からのイメージ(そして戦争に対する抗議)は、ほぼ10年間アメリカのリビングルームに漂っていた。1960年代に深く根ざしたフィクション『Hearts in Atlantis』は、ベトナム戦争の忘れ難い遺産を、40年という時間を通して探求することで、読者を魅了する。
キングは、『Hearts in Atlantis』の中で登場人物をあらゆる方法で試す。そして、彼と同世代の人々の抱えているものにメスを入れ、謎を解き明かしている。危険、サスペンスに満ち、そして何よりハートに満ちあふれた本書は、これまで決してたどり着けなかった領域に読者を引き込むことだろう。