本書も古代の物語の要約が大半を占めている。アイルランドの幻想的他界潭である『メルドゥーンの航海』や『聖ブランダンの航海』、クレチアン・ド・トロワによるアーサー王を主人公とした物語詩が取り上げられており、これらの物語の内容を手っ取り早く掴むには有益な書籍となっている。
題材となっている物語そのものの面白さは十分に伝わってくる。
アーサーの物語がユダヤ・キリスト的物語と何が違っているかが、ケルトの伝説と比較するときにはっきりしてくるというのは興味深い。ケルトの影響が濃い「聖パトリックの煉獄」がダンテの「神曲」に影響を与えているなど、西欧文化とケルトとのかかわりなどにも触れられている。
アーサー王の物語との関連では、「荷車の騎士」ランスロとケルト神話との類似について主に語られている。