幸田文の小説に浸る
★★★★★
昭和33年1月〜12月、「婦人公論」「婦人画報」に
平行して連載された2つの作品。
『駅』
市井の人々の変化、再会、別れ、転地など、
暮らしの中で見聞きする様々な事柄。
事が起これば、人の心も揺れ動く。
まるで、「駅」に乗り物が出入りする度
その構内でドラマが繰り広げられる様に。
『栗いくつ』
己の無知無力を見つめて「屑だもの」と嘆く女。
安寧な暮らしを捨ててでも「生き甲斐のある職を見つけたい」と訴える女。
「くれくれ」と人を頼る事でしか生きる術を知らない女。
全く異なる性格を持った三人の女が、
各々の身を立てようと模索している。
彼女たちの接点である主人公=萱子(k文子か)が
頭を悩ませた甲斐あり、物語は晴れやかな結実を迎える。