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黒い裾 (講談社文芸文庫)

価格: ¥1,260
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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小説家幸田文の主人公「幸田文」 ★★★★☆
解説で出久根達郎氏が「ういういしい幸田ファン」と題して書かれているが、私自身も全く同じ錯覚をしていたのかも知れません。
幸田文と言えば、小説家と言うよりはエッセーイストの印象の方が遙かに強いものがありました。「流れる」を初めとする長編の何編かを除けば、すべてエッセーであり、露伴の周辺、死後は自分の身の回り、そして自然への観察力の鋭さを感じていました。
ところが、この「黒い裾」では、一編目の「勲章」はその流れで読んだのですが、二編目の「姦声」で驚いてしまいました。何と「幸田文」が強姦未遂に会うのです。
それでも、「雛」「髪」「段」あたりまでは、不可解な気持を持ちながらも、今まで通りの読み方をしていました。
しかし、終盤に入って、「糞土の墻」「鳩」「黒い裾」に至っては、主人公の名前も違い、これは「小説」なのだと思わざるを得ませんでした。
と言うことは、この「黒い裾」全体が、「小説」であり、ひょっとすると、今まで読んできた幸田文の作品の多くも、「幸田文」を主人公にした「小説」ではないかという気がしてきたわけです。そこへ、この解説文に出会い、納得です。
それにしても、ここまで文庫化されているほとんどの作品を読んできて、それに気づかなかったとはです。

タイトルが「黒い裾」という事もあってか、幸田文の作品の中でもちょっと異色な作品群で、ブラックな感じのする作品が多いような気がします。
それでも、幸田文の語り口や言葉遣いは全く変わりませんし、観察眼の鋭さは圧倒されるものがあります。
オードリー・ヘプバーンについて、非常に古典的な日本人によく似ているというところでは、確かにそうかも知れないと思いましたし、だから、日本人に人気があるのかなとも思いました。