このシリーズの中でいちばんロマンティック
★★★★★
ハザウェイ家の末っ子ベアトリクスは、自然を愛し、傷ついた動物を
放っておけず次々と面倒を見ている優しさの持ち主。
しかしそれゆえに、貴族社会では「変わり者のハザウェイ家の中でも
一番の変わり者」と偏見の目で見られてます。
このベアトリクスにはどんな男の人が合うのかしら、、、と思ったら
この作者さんにはめずらしいほどの正統派のヒーローです。
アポロのような金髪の壮絶なハンサム。りりしい軍人。クリミア戦争
のヒーロー。伯爵家の後継ぎ。
そして、普段はとろけるほど優しいのに、ベッドの中では意地悪。
ベアトリクスは、華やかな美人の友人に届いた手紙にひょんなこと
から代筆することになり、、、というのが始まりです。
この最初の手紙のやり取りがいいです。ヒーローが恋に落ちる手紙
なのですから、作者がものすごく気を使って書いたのが分かります。
手紙が魅力的ではないと、ストーリー全体が成立しないですものね。
戦場へのラブレターで幕が開ける展開も抒情的ですが、森の中の秘密の塔
(ウェストクリフ伯爵!の所有)とか、「だめだ、帰さないよ。今日の午後
君はずっとぼくといるんだ」とか、新婚の夜とか、もう、とにかくめちゃく
ちゃロマンティックです。
シリーズの中で一番のお気に入り。
あと、蛇足ながらこの作者さんは、さりげなく歴史的事実をストーリー
に組み込むのがうまい。クリミア戦争(ナイチンゲールが活躍した)の悲惨
さに苦悩するヒーロー、アイルランドの爵位を継ぐメリペンが直面する
アイルランドのじゃがいも飢饉の後遺症。
社会が大きく変化していくビクトリア時代のうねりがストーリーの底辺
に流れていて、話に厚みを加えている気がします。
背景にも気を抜かないところがベストセラーのゆえんでしょうか。