世の中にはふたつの倫理システムがある。
統治(政治)の倫理と、市場(商業)の倫理だ。
ふたつのシステムはそれぞれ一貫しており、両者を混同するとロクなことにならない。だが他方で、両者は相互に補い合っており、どう調和させるかが問題となる。
こうした問題が、四百頁を費やして論じられる。
とはいえ、文庫本で大きい活字の対話篇であり、散りばめられた逸話も面白いので、それほど読み通すのに苦労はしないだろう。
最近はやりの民営化・NPM(ニューパブリックマネジメント:行政への市場的手法の導入)に対する建設的批判としても読むことができる。
個人的に面白かった個所はいろいろあるのだが、一番笑えたのはマキャベリを引き合いに出した個所。そこで元編集者の話者は言う、マキャベリの教えを企業経営者に薦める書物を出版したのは間違いだった、と。なぜなら、統治の倫理と市場の倫理を混同することになるからだ(284-5頁)。世の社長のみなさん、お気をつけて。