「文」の優越性を証明したのだろうか?
★★★★★
”夏目漱石”と並ぶ明治の文豪”森鴎外”が、日清、日露戦争に従軍したことを通して、公人としての自分と文人としての自分との狭間で苦悩する姿が良く書かれている。
田山花袋などとの交友などのエピソードも効果的に挿入されていて興味深い。
軍人である鴎外が、戦争の悲惨さを目の当りにしながら、彼の理性が戦争を否定してしまう苦悩の姿にも触れている著者の視点に共鳴できた。
鴎外の生涯を書きながらも、明治という時代を、多面的に捉えて書かれているから、当時の文学界を俯瞰することもできる。
なかなか読み応えのある良書だった。