理論・用語のアーカイブとして
★★★★☆
著者自らが「SF乱学者」と名乗っているように、宇宙・地球・生物といった広大な世界を新書一冊にまとめあげるだけの力量を具えた人物だということがわかる。
理論の概要・生み出された背景・発展について解説がなされており、現時点での理論の解説に特化せず、どうしてそのような考え方が生み出されてきたのかという発展史を探る上では最適の本といえる。カラーのイラスト説明、写真の掲載などのコストを考慮すると、この値段ではお得であろう。
2008年の日本人計4人のノーベル賞受賞で、理系の分野に改めて興味を抱いたに過ぎない「にわか読者」の文型系の私としては、十数年前のセンター試験の受験対策以来の専門的な理系理論への挑戦だったが、当時習った内容が進化していて新鮮であった。
ただ、「ハンドブック」との題名に、簡潔明瞭さを期待する人にとっては確かに難しい内容かもしれない。専門用語が多く散りばめられている印象が強く、高度な専門性を有していないとスラスラと読める本ではないと思う。ちゃんと理解しようと思ったら、ところどころ立ち止まって、「○○とは何?」とインターネット等で調べなくては理解できず、読破するのに時間を要した。
しかし、ネットで検索するに至るそうした読者の行動も、改めて著者の「はじめに」の言を参照すると、著者の意図に則った行為だったと後から理解した。
「本書は、宇宙や地球、そしてその惑星の生物たちの姿を楽しむテーマ・パーク兼【案内地図】として企画された。―略―(本書が)【ネット宇宙をサーフィンするためのアーカイブ】たらんことも希望する。ネット時空は、いま無限に膨張し深化し続けるかに見える。本書で、「アッ、これはおもしろい!」と思ったことや、言葉を検索にかけ、さらなる逸楽の世界にふけられんことを!」
宇宙・地球・生物に関するこれまでの理論は広大なもので、簡単に描けるものではない。マクロからミクロに至るまでの理論・用語のアーカイブだと思えば、手元におきたい一冊である。