本書は、本来は国民の健康を守る義務のある各国政府が、農業関係者の短期的な利益を優先し、消費者の利益をまったく守ろうとしなかったことも暴いている。飼料の危険性がわかってからも、アメリカの食品医薬局は5年以上、畜牛を禁止飼料から遠ざけることができなかった。一方、マクドナルドはこれをわずか数週間でなしとげてしまった。企業の力の大きさを示す好例である。しかし、著者は大企業による食べもの支配には本質的に反対の立場で、それは正しい判断だと思える。その意味では、保健相と農業相を辞任させ、新たに農業保護より消費者保護を優先する農業栄養消費者保護相を誕生させたドイツ政府の取り組みは注目すべきだろう。
なお、ファストフードがかかえる諸問題、特に企業がいかに農業や労働者に悪影響を与えているかについては、やはり前作の「ファストフードが世界を食いつくす」をじっくりと読む方がよいだろう。
アメリカではじめて「へたり牛」がBSEであると判明して、日本では牛丼が消えた1年半前に出版された本ですが、メッセージの普遍性さは今日でも有効です。
個人的には驚くような新事実が盛り込まれた本ではありませんでしたが、消費者として賢い選択をする資料として勧めます。
本著によると、アメリカでは中枢神経組織が含まれた“製品”でも立派な「牛肉」として問題がないとのこと。
89-92年:ペンシルバニア・アレンタウン15人
96-97年:フロリダ・タンパ地区18人
99-00年:ニューヨーク・ナッソー地区12人
01-02年:オレゴン州14人
95-04年:ニュージャージー州10人
と集団発生している。
アメリカでは年間400万人がアルツハイマーと診断されるが、このうち3-13%=12万人~は実はヤコブ病ではないのか?
農産物名誉毀損法というのがあるので、根拠もなく滅多なことは言えない国だが。
しかし本書は分量を抑え、分かりやすい文章を使い、前作に無かった出典・参考文献を掲載して信頼度を高めている。ファーストフード精神とBSE事件の関連性の分析も大変興味深い。エリック・シュローサーのジャーナリストとしての能力が開花した本。
前作のエッセンスも分かりやすく振り返ってくれており、(私のように)「ファーストフードが世界を食いつくす」を読みきれなかった人にもお薦めします。