インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

老人のための残酷童話 (講談社文庫)

価格: ¥490
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
Amazon.co.jpで確認
   グリム童話や日本の民話に独自の解釈を加え、創作した『大人のための残酷童話』から20年を経て、倉橋由美子が贈る不思議な10の物語。本書は、人生もなかばを過ぎた老齢の人物ばかりを主人公とした、短編小説集だ。幻想小説を得意とする著者が、端正な文体と柔らかな語り口で、人間の奥底にひそむ欲望や愚かさをあらわにしてみせる。

   鬼に変貌していく老親を捨てた夫婦のその後を描いた「姥捨山異聞」や、七夕伝説の織女と牽牛の住む天界を舞台にした「天の川」などは、誰もが馴染みのある昔ながらの物語を下敷きにしている。また、野良犬の真似をするおじいさんの奇妙な日常をつづる「犬の哲学者」、戦争地獄やダイエット地獄といったさまざまな地獄を、死ぬ前に体験できる旅行ツアー「地獄めぐり」などは、毒気を含んだユーモラスな作品といえる。そのほかにも、「子を欲しがる老女」や「臓器回収大作戦」ではクローン技術や臓器移植の問題を絡めながら、現代科学の進歩に皮肉を投げかけるなど、著者の新たな一面も読み取ることができる。

   男女の性欲、裏切り、殺人、そして亡霊や死後の世界といった題材が、たびたび登場する本書は、童話と呼ぶにはあまりに生々しいものばかりだ。だが、それらが決して悪趣味にならないのは、これまでも耽美な作品を描き続けてきた著者の力量ゆえである。「老人のための」と名づけられてはいるが、万人を非日常の世界に導いてくれる、刺激的なおとぎ話の数々である。(砂塚洋美)

社会が見えるこわ〜いおはなし ★★★★☆
「むかしむかし、あるところに…」と始まり、いつの間にやら地獄の世界に踏み込んでいるような気持ちになる10編のお話し。
人間の終末をどう迎えるべきか、老いてもなお性や生きることへの執着は衰えず、そこに生まれるさまざまな悲劇。
御伽話の語り口ながら、現代が抱えるさまざまな問題をはらませた秀作。
地獄 ★★★★★
面白かったです。倉橋さんの作品は他に『大人のための残酷童話』を購入し、何度読んでも飽きなかったので、そのシリーズに属する当作品が出たときはとても嬉しく思いました。前作とはやや趣を異にしていますが、それでも期待を裏切らないものでした。
作品には目を覆いたくなるような残酷な描写や、グロテスクな描写も多いですが、どこか御伽噺調でいてレトロな雰囲気(上手く表現できませんが現実に紗がかかったような夢世界の物語。実際、古典や有名な逸話、聖書などになぞらえて書かれている箇所が多い)の語りなので、苦も無く読み進められます。
それに、有名な話のブラック・パロディーのような作品たちは、どこか人間たちの暗黒を抉り取っているようで、それが真理なのではないかと思うほどです。歴史上に残る逸話は美談ですが、実際偉人として伝えられている人にはこの作品に描かれるような裏の顔があったのかもしれませんね・・・そう思うと面白いです。
特にお勧めは織姫と彦星について語った中国の美しい神話のようなお話、と、巻末に掲載された地獄めぐりツアーに出かける老人たちのお話です。特に後者は、現代社会に生きる人間たちが抱えた様々な地獄を面白交じりに冥界での生活として痛烈に揶揄し、最後には恐ろしい結末が・・・というお話。語り継がれてきた童話のようにきちんとした起承転結があって、しっかりと現実を比喩していて、さながら現代の御伽噺です。
倉橋さんの冥福を祈り、これからも読み続けていきたいと思う大切な作品です。
相変わらずの鋭い観察眼 ★★★★☆
「倉橋由美子の怪奇掌篇」、「大人のための残酷童話」の姉妹編とも言うべき作品。「老人の」と銘打ってあるように、生命、仏縁、老いての性欲等が相変わらずの鋭い観察眼と皮肉な眼とで描かれている。

「姥捨山異聞」は姥捨伝承を基にして、"閉じ込められた女は鬼になる"というテーゼを設け、奇抜な終末へと運ぶ展開が秀逸。「子を欲しがる老女」は人工授精への皮肉なのだが、神のコピーを作るという話に発展して哄笑を誘う。「天の川」は有名な織女と牽牛の話をモチーフにして不老不死の概念を嘲笑する。「臓器回収大作戦」は臓器移植の問題を、現世と冥界とから描いて、強烈に皮肉ったもの。「地獄めぐり」は旅行社が主催する"地獄めぐり"ツアーに参加した老夫妻のうち、妻が取る行動が見もの。男にとっては怖〜い話。

いつもながらの(ブラック)ユーモアと諧謔に満ちた作品で、世の中のせせこましい常識や社会問題を吹き飛ばしてしまう快作。もっと、作者の作品を読みたかった。

単調 ★★☆☆☆
大人のための残酷童話と比べると、淡々としすぎてしまってる気がします。
あれ、もうその展開?という感じに山も谷もなく奇抜な物語も奇抜に見えないというか。
完成度の高いただの空箱といいますか。
後に何も残りませんでした。
徹底した悪意とは? ★★★★☆
「大人のための残酷童話」には服用すれば正気に返るという往年の倉橋ファンにはお馴染みの毒が仕込まれていた。本作はそれとタイトルは似ているが、毒に同じ効用はない。「大人のための残酷童話」では物語は白日の光の中で整然と進行し、その輪郭は確かに残酷といっていいほど明瞭だった。しかし因果応報、勧善懲悪、自業自得の原理が採用されていない本作に合理主義はない。つまりこれはお伽噺ではなく、幻想や妄想に属する怪異を文章の力だけで読ませようという趣向の作品であり、だからこそ様々な文学作品がパスティーシュ、パロディとして辿られるというイギリスの文学伝統に倣ったかのような技法も用いられているのである。和洋漢を問わず古典から現代まで大人向きで著者好みの文学に精通しているほど、その仕組みを楽しめるというカラクリはまさに老境ならではの悪意ではないだろうか。