「彼女が飛び降りるとは思ってもみなかったのよ。だって、彼女はウィルソン・レザーの400ドルもするジャケットを着ていたんだもん。誰が400ドルのジャケットと一緒に橋から飛び降りるって言うのよ?! そんなこといまだかつて起こったことがないでしょ。ジャケットがだめになっちゃうじゃない。キャロルは私と一緒で、トレントンのチャンバースバーグ出身なわけで、そこの習慣としては、まず、ジャケットを妹にあげてから飛び降りるのよ」
ステファニーは、やっとのことでキャロルに自殺をやめさせ、ビンセント・プラム保釈保証会社で働くことを承知させた。
ところが、今度は、彼女の同僚、バウンティ・ハンター兼殺し屋でステファニーをむんむんとした気持ちにさせるレンジャーが消息を絶ったらしい。ブラックマーケットで武器を売買しているアレキサンダー・ラモスの所有しているビルが全焼して、焼け跡から彼の息子、ホーマーの死体が見つかった。死因は焼死ではなく銃によるものだと判明。ビデオカメラがビルの中にいるレンジャーの姿をとらえており、彼は警察に出頭を求められていた。ステファニーのボス、ヴィニーは彼女にレンジャーの捜索を依頼したが、ステファニーは、依頼を拒否。レンジャーは見つかりたくなければ絶対に見つからないとわかっているのだ。ステファニーのボーイフレンドで警官のジョー・モレリやローレル&ハーディーもどきの2人組など、みんながステファニーの後をつけ回しはじめる。
ステファニーには、ほかにも心配ごとがあった。まず1つには、マズーおばあちゃんとゴールデンリトリバーのボブ(半分野生が残っている)がステファニーの家に転がり込んできたのだ。そしてレンジャーが夜中、思いも寄らない時間に出没し、ステファニーにラモスのもうひとりの息子、ハンニバルを守るよう伝える。そうこうしているうちに、また別の死体が見つかる。
ステファニーのいつもの悪いカルマのせいか、または地獄からのお達しか、読者はまたまたステファニーのアドベンチャーに引き込まれる。ステファニーは成功するのか? ジャムドーナッツだったら賭けてもいいだろうが…。そして、あっと驚く結末がまっている。
さて今回は、そんな気になる男性の一人レンジャーが、殺人の容疑で追われる身に。もちろんレンジャーのこと黙って捕まるワケもなく、どこかに姿を隠してしまう。ステファニーも探しはじめるが・・・そこは師匠と弟子、経験も実力も月とスッポンほど違いそう簡単には見つからない。そこにさらにレンジャーを追いかける連中や天敵ジョイス・バーンハートまで加わって・・・、あとはもういつものとおり、車は炎上し、メイザおばあちゃんは暴走し、の大騒ぎ。笑えます。
巻末の解説や、他の方の書評にもよく書かれているのですが、このシリーズ、キャラクターが生きている。レギュラー陣はもちろんのこと、一作限りの登場という人物もしかり。ぜひ再登場してほしい人が何人もいます。こんな個性的、変わり者ばかりの中に混じっては、初登場でいきなり目立つというのはなかなかタイヘンなことなのですが、毎回必ずいるんですよね、初登場でレギュラー陣を食ってしまうような人が。本作でもステファニーの同級生!のダギーとその友人ムーンなどいい味出しまくりなのですが、何といっても新人賞はボブでしょう。このボブ、人じゃなくってゴールデンレトリーバー、犬なんで新人賞というのもヘンですが。犬とはいえその天然のオトボケで、ステファニーやモレリといった一癖ある面々を唖然とさせ振り回す様は存在感満点で犬にしておくのがもったいないくらい。とにかくすごい犬なんです。
ステファニーとモレリ、レンジャー、そしてボブの大活躍、みんなで楽しみましょう!
ヒロインとタイプの違う2人のいい男、というとハーレクイーンみたいだけど、全然違う。下品で、どたばた、ギャグ満載。まるで、ドリフ「8時だよ」のアダルト版?でも、めちゃおもしろい。絶対笑い出しちゃうから人前で読んじゃダメ。だけど、これってミステリとしてはどうなの?