『黒衣の花嫁』や『喪服のランデブー』でも用いられた、被害者を主人公とした短編小説がいくつも連なってひとつの長編小説になるという趣向が今作でも使われています。しかし、前述の2作と比べるとその効果はいまひとつのように感じられます。主人公が個性的でないことと、恋愛が殆ど登場しないことがその理由でしょうか。ほんの一部分だけ恋愛が登場するのですが、その部分だけ突出して筆が活き活きとしているところに、ウールリッチの個性が見え隠れします。