金沢さんは日経コンピュータで連載していた電脳無法地帯が面白かったので、単行本化していないだろうかと調べてみた結果、この本にいきつきました。
正直タイトルの堅そうなイメージからどうかな？という半信半疑の気持ちで最初の数ページを読み始めたのですが、読むのがとまらなくなりその日のうちに全部読み終えてしまいました。
中小企業の経営の難しさや、営業戦略、マーケティング、財務会計のことがわかりつつも、登場人物たちの個性や、苦悩が非常に鮮明に一貫性をもって描かれていましたので、読み応えがありました。
三国志の豪傑のような三上や、柴田も柴田なりの過去と悩みがあり、恐ろしく近寄り難い木田社長にも人としての弱さがあったり、企業小説という位置づけで、経営の知識や背景をベースにしていますが、やはり小説は登場人物の魅力がすべてだと思いました。
よかったです。是非お勧めの一冊です。

処女作とは思わせない力作。電子部品の商社だったアドバンスを、情報機器商社として飛躍的に発展させていく過程は読み応えがあり、著者プロフィールからアナリスト&ファンドマネージャーの経験があると知って妙に納得。またビジネスの世界に生きる男たちや、父と息子の関係もリアルに描かれていたと思う。後半、主人公がギリギリの決断を迫られる展開からは目が離せなかった。今後の作品もぜひ読みたいと思う。

作者からとても大きな勇気をもらった。
自分は、問題再送り・上司の指示通りにしか動かない・自分の意見は絶対いわない・上司が帰るまで帰れない職場に勤務しており言い訳はひたすら家族のためという自分に対し、痛烈な鉄拳であった。
ベンチャー企業での非常に濃い人間ドラマ。それをささえてくれた妻。
我々、平凡なサラリーマンには理想のような、威風堂々とさわやかに、ドロ臭く人間味あふれるストーリー展開に酔いしれた。このままでサラリーマン生活を終えて良いのか？沢木耕太郎の＜一号線を北上せよ＞
を読み終えた時とよく似た爽やかな勇気を貰った。

現在銀行員の小生にとり、畑山の生き様は痛烈なメッセージを与えてくれた。ベンチャー企業での苦労と成功と銀行の陰謀！！
世の中的には安定した、農耕民族の銀行員と違い、証券マンは＜時差・金利差は金なり＞と狩猟民族でバイタリティ溢れる。
家族のためと言いながら、何か不完全燃焼の毎日に対し、＜このままでサラリーマンを終えて本当に良いのか？後悔しないサラリーマン生活だったのですか？＞
誰も責任を取らない、問題先送り、事なかれ主義の風潮に痛烈なメッセージをくれた作者に、＜ありがとうを言いたい＞。

実在の企業をモデルにしているわけではないようだが、リアリティは十分。文章も練れていて、一気に読める。また経済小説に留まらず、ある人にとって“重苦しい人の存在”という、新鮮なモチーフを取り入れているのもユニークだった。読後感もいい。半面、ストーリー展開がシンプルすぎて深み（広がり）に欠ける、人物描写がやや粗いなど、難点はいくつかあるが、処女作ということなので、今後が楽しみだ。