霊感占い師ら4人の惨殺死体が発見された。捜査本部に加わった警視庁機動捜査隊・音道貴子刑事は、捜査一課の男性刑事と組んで捜査を開始。しかし、ペアとなった彼は出世志向が強いうえ、公私の区別もつかない愚か者だった。そんな男と組んだばかりに、音道は単独で行動する羽目になり、結果、犯人捜索中に誘拐・監禁されてしまう。
物語中盤から音道の監禁場面と警察の救出作戦が交互につづられ、鬼気迫る緊張感が伝わってくる本書は、550ページもの大作にもかかわらず一気に読める。シリーズを知らない読者にも十分に楽しめる作品であろう。また、シリーズ愛読者にとっては、おなじみの女性蔑視甚だしい中年刑事・滝沢が、今回は、行方不明となった音道を救うために奔走する点が興味深い。犯人と警察との交渉場面で一部非現実的な記述がありはするものの、ドメスティック・バイオレンスなどの女性問題、昔ながらの聞き込み捜査とUシステム等の最先端技術を混在させた警察捜査など、現代日本社会に寄り添った描写が、リアルさを追求した良質の長編サスペンスにしているといえよう。(冷水修子)