ゆめの中(前作)を読めばそれで足りる
★☆☆☆☆
本書は主に裁判記録を載せている。取調べ段階で暴力を振るわれた旨記述しているが、裏づけはない。前作では宮崎の考え方がかなりよくわかったが、本書では裁判記録の要約部分が事実を明らかにする上で網羅されているとは言えず、また適切な部分を引用していないように思われる。かなり中途半端な本。宮崎には自分が裁判官であれば、低年齢者を4人を殺している以上、死刑の判決を書いたと思う。しかしながら、鑑定をもっと緻密にするよう求めたと思われる。公判に提出されたどの鑑定も不十分という感が強いからだ。いわゆる猟奇殺人・無差別殺人などが溢れている(ように報道されている)以上、一つ一つ事件をよく解明しなければ、新たな犯罪を防ぐことはできないだろう。この本でよいところは、香山リカの巻末の解説であり、これは読む価値があった。宮崎事件がいかなる事件かがわからなくなっているし、どういう経緯なのかも不明になっていることもあり、宮崎の交わした書簡、証拠、文章やスケッチなども含めて事件の推移を明らかにする本が出版されることを期待する。
分かっていたと思っていたことが、根底から崩れ去った
★★★☆☆
普通、本を読むとその事柄について理解が深まるものだが、この本については逆だった。
まず、自分が「当たり前」と思っていたことが、疑問に思えてくる。何が本当で、何が嘘か分からなくなるが、「何が本当・何が嘘」という問いすらバカバカしく思えてくる。要するに、立場によって、人によって、意見が違うのがむしろ当然なのだろう。正直、宮崎さんの言っていることが、どこまで本当かは、証明する術はない。ただ残念なのは、この本がインタヴュー形式であること。結局は、インタヴューした人の興味が中心になる。宮崎さん本人が始めから終わりまで、本人の決めた章立てで書いていたら、違ったものが見えてきたに違いない。
宮崎さんの受け答えから、残忍な犯罪を犯した人、という印象は受けない。事件のことを知らなければ、「こういう人がいたって別にいいんでないの」と思うだけだ。
宮崎さんを応援している人たちがいたことは多少驚いた。しかし、別に不思議でもない。
彼が犯したような凶悪犯罪は稀であるので、彼を死刑にした意味が私個人は分かりかねる。彼からもっと貴重な資料が得られたかも知れないのに、彼はもういないではないか。鳩○さんのせいかも知れないが、そんなに急いで執行する必要はなかったと思う。死刑にする必要すらなかったと思う。こう書くと、遺族の方に叱られるかも知れないが、第三者のあなたまで怒ることはない。日本の古いリンチ感情に支配されているご自分に気づいて下さい。
とにかく、世間で言われていることと、宮崎さんの言っていることは食い違っている。宮崎さんの言っていることを信じれば、日本はまだ「オイコラ警察」の時代だったのかと、驚く。
夢の中、いまも
★★★★☆
宮崎勤死刑囚の2作目の著書です。
彼のした(とされる)犯罪にはあまり興味が無かったのですが、拘置所内からの出版物に興味があったので購入しました。
東京拘置所という日常のバタバタした世界から書いているからか、彼の非常に静かな印象を受け、ある種の哲学性を感じました。
・拘置所内の夏の暑さについて。
宮崎「私は何も感じないが、私以外の被告人たちがうす着でいるのを見かけると夏ということが分かる」
・児童ポルノについて。
宮崎「私はポルノ等にか興味は無いが、私は多勢いる「規制というものには反対だ」というい慎重な人々の一人として、ここに述べさせてもらう」
宮崎「規制は良くない、を通り越して、規制は世の中を悪くするので、規制してはいけない!のである」