築地の“ナカ”に行きたくなる
★★★★★
築地は、うまいもの好きにはたまらねぇ場所。
場外で買い物をしたり、“魚がし横丁”で食事をしたり、
でも、何度訪れても“ナカ”と呼ばれる場内卸売場には入りにくいです。
立入禁止ではないけど、プロの商売の場に立ち入ってはいけない気になるんです。
ただ、そこがどんな所なんだろうなあ、と興味は持っていました。
この本は、知りえないプロの世界が垣間見れる一冊です。
著者は築地魚河岸三代目。
河岸では、三代目は石を投げると当たるくらい多いと聞きますが、
魚河岸の魅力や奥深い魚食文化を熱く語ってくれる三代目は、この人だけでしょう。
“すべて魚が優先の世界”でありながら、どこよりも昔ながらの“人間臭さ”が残る町。
河岸に生きる人々や、セリの現場、取引の符牒、水産流通のしくみなど、
この本には、ガイドブックでは味わえない魚河岸ならでは生の話が満載です。
これも筆者が本物の“ナカ”の人だから書けるのでしょう。
“食べ物は命だ”なんて、他の人が言えば薄っぺらく響く言葉も、
この著者の口から出ると、とても説得力があって感動しました。
この本を読んだら、今度こそ“ナカ”に入れるような気持ちになりました。
でも、多分入らないだろうな。
“ナカ”はいつも近くて遠い場所で…それでもいいのかな、と思います。