隠世ノ物語 第一話・俺の後援者は人じゃない 第二話・狂った美の蒐集者
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妖怪と画家の仰天コンビが奇怪な力を駆使して難事件を解決! 妖怪モノとミステリーの本格的な融合は、あの世とこの世の狭間に未だかつてない探偵小説を生み落とした。恐ろしうてやがてびっくり、きっとあなたも癖になる……。
人が住まう世界、現世(うつしよ)。
あやかしが生きる世界、隠世(かくりよ)。
二つの世界が出会った時、何かが起きる。
ダメダメ画家の春川美樹(はるかわ・よしき)が師匠から破門された夜、乗り込んだ電車は……。
「おお、ようやっと目を覚ましたのかえ?」
女の声に、美樹は咄嗟にスケッチブックを抱えて辺りを見回した。
それを見て、一瞬意識が遠くなり、我に返って絶叫した。
その正体は美を食らって美しくなるあやかし、朧車(おぼろぐるま)だった。
「否。我を見留め、乗れる者に美しさがないはずがない。喰ろうて分かる美しさやも知れぬ、喰うてみるかえ」
そんな朧車が認めたのは、誰にも認められなかった美樹の絵だった。
「美樹の眼には、我はこのように見えていたのかえ?」
「分かりません」
美樹は素直な感想を口にした。
「描いている内に、あなたに引きずり込まれた。あなたを表現するのにどうすればいいか悩んで迷って、結果こうなった。気に入らないなら破って俺を喰ってくれて構いません。俺にはあなたをそうとしか描けなかった」
美樹を気に入った朧車は、美樹を自分の絵師として隠世に連れて行く。
隠世の住人となっても現世に絵を描きに行く美樹は、描いた覚えのない絵を描いてしまう。
「確か『連続美女顔剥ぎ殺人事件』と言われておったな。美樹は覚えておるか?」
真実を絵に描き出す力。隠世に来て身についた力を使って、朧車は犯人を捕らえろと命じる。
果たして犯人は? 朧車との因縁とは?
その行方は、絵の中に。