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ローマ人の物語〈21〉危機と克服〈上〉 (新潮文庫)

価格: ¥452
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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混乱の一年 ★★★★★
追い詰められて亡くなった「暴君ネロ」。反ネロ、新皇帝として擁立されたガルバでとりあえずは落ち着くかと思われたが・・・
若かったネロに対しやや高齢のガルバは、総督をうまくつとめていて新皇帝には無難な線かと思われたものの、
何だかんだとぐだぐだしているうちに時期を逸し、人事もうまくなく、別に大変な暴挙をしでかしたわけでもないのに政権はボロボロに。
あっという間に倒されたガルバを継いだ元ネロの遊び仲間オトー。しかし、「ガルバはやめ、ヴィテリウス擁立」と考えた軍勢がすでに南下中だった。
当時は馬を疾駆させて情報を伝えるしかない。当時、せめて固定電話でもあれば、歴史は違っていただろうと何度も思わされる巻であった。
普通に帝位を継承して平穏な世の中の統治をスタートさせたのなら、オトーもうまくやったかもしれないが、
結局ヴィテリウス派とオトー派の武力衝突になってしまい、天才武将の不在により何ともすっきりしない闘争が続く。
結局敗北したオトーの後を継いだヴィテリウスは、戦後処理の巧みさがなく、相手に深い怨恨を残した。
というわけで、何か月かずつで皇帝が交代、しかもローマ市街での内戦勃発と大変な乱世になるのだが、
帝国のシステム自体は通常同様に運用されているために、全市民の生活に影響を及ぼすものではない。
あまりにも短期間で次々に皇帝が倒れてゆくさまは、無常感よりもむしろ苦笑を誘われる。市民も「嗚呼、またか」と脱力しながら見守っていたのではないか。
しかし、トップの混乱は市民生活に直接打撃を与えなくても、大帝国の運営全体ではほころびが出る。それが、次巻に描かれることになる。
皇帝の資格 ★★★★★
ネロ帝ののち、混迷を極めるローマ帝国。
現れては消える皇帝、1年間になんと3人。
一般的にイメージされる神のごとく君臨する皇帝とは違い、ローマでは皇帝であっても力量が足りなければ殺されてしまうのだ。

この1年を語るタキトゥスの筆の乗りが悪いとのことですが、塩野先生の乗りもやはり悪いように思えます。そしてろくでもないことばかりやる人物の物語を読んでいる側の乗りも悪くなるのは致し方ないような。

中下巻では、ヴェスパシアヌス、ティトゥス、ドミティアヌスの親子皇帝が帝国の再建に乗り出します。『パクス・ロマーナ』『悪名高き皇帝たち』を読みきったので政治の話もスイスイ読める。

しかしローマ帝国再建にかかわった皇帝たちを読んでいて思うことは、日本の江戸時代の徳川幕府のこと。治世の長さや地理上の範囲は比較になりませんが、多くの為政者がバトンタッチすることで治世を引き継いだ点は似通っています。『徳川の物語』なんて誰か書いていないものだろうか。
頭をすげかえ続けた1年間の混乱 ★★★★★
ネロ自死後に皇帝に名乗りを上げた(というよりも成り行きで手を上げた観が強い)ガルバ。それ以降、たった1年間でローマは3回も皇帝を変えることになります。この間、事態は、それぞれ国境警備を任されていた「ライン軍団」と「ドナウ軍団」の戦闘、そのことに起因して発生する怨恨と報復(これは皇帝ヴィテリウスの愚かな施策による)、そしてローマ市街戦へと発展していきます。
それにしても印象的なのは、平凡な、否、その地位にふさわしい能力をもたない人間が帝政のトップにつくことの恐ろしさ。そして、逆に、帝政という、いわば皇帝の能力によって国の行く末が左右される仕組みでありながら、皇帝にその能力がないなら頭をすげかえればいいと冷静に見極めていた市民たちの反応です。ローマで市街戦が勃発しても、殺し合いが行われるなかで、市民たちは居酒屋で盛り上がり、娼婦も客をとっていたといいます。
混乱の極みであった1年間はまさに「危機」。これに対し、新皇帝ヴェシパスアヌスがいかなる施政を行うのか。次巻での「克服」の部分に興味をそそられます。
トップの大切さ ★★★★★
一年間で3人もの皇帝が死んで入れ替わる、ローマ帝国としては異質の時代。
皇帝ガルバを評して、タキトゥスが「よき資質に恵まれなかったというよりは、悪しき資質が全くなかったというにすぎず、要するに平凡な出来の人物」といっているのが面白い。要するにまともなだけじゃ政治はやっていけないですよ、とそういうことか・・・
平凡な才能のトップが次々と出てくるだけに著者の指摘も凄みを増す。「裏切りは恐怖よりも軽蔑から」「トップというのは、勝負がかかっている場には必ず自らが出向く必要がある」という言葉に、勝手に我が身を振りかえざるをえなくなってしまう。
感情による時代の動き ★★★★★
皇帝ネロの死の直後、1年間で3人の皇帝が代わる混乱期を描く。
当書はその混乱期の人の心の動きと時代の動きをうまく掴み、描き出している。
読んでいていて面白いのは、名誉、意地、懐柔策など、人の感情に関することで混乱の羅針盤が大きく左右に振られていくことだ。たとえ巨大な帝国であっても、人が作ったモノは人の感情で動く。それは人が感情の生き物だからだろう。結果、感情の機微を知らなかった者は、権力や権威でより優位でありながらも倒れていく。そして、最後に残ったのは感情の機微をわきまえた常識人ヴェスパニアヌスであった。これは現代社会、とくに企業にも当てはまることかもしれず、興味深い。