面白いが物足りない
★★★★☆
本作は産経新聞に連載された『ナポレオンの夜』を纏めたものです。主人公はパリの新聞記者であり、彼が歴史上の人物にナポレオンに関する話を聞き出すという形で話が進んでいきますが、この記者は実在した人では無いのでしょう。ただナポレオンを主人公にしてその行動を描写していくよりも当時(1815年)の記事としてナポレオンの有様を読んで行く形式の方が時代の雰囲気をよく掴むことができると思いました。読者はこの記者と共にナポレオンの影を追い、最後には彼に直接面会して等身大の英雄をこの目で見ているような錯覚に陥るはずです。一つ残念なのは戦闘の記述に戦略的、戦術的視点が無く戦史の研究として読むことができないことです。本作の主眼はナポレオンの人となりであってナポレオン戦争では無いのだから仕方ないですね。しかし其れはナポレオン狂には厳しい仕打ちです。