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小説日本芸譚 (新潮文庫)

価格: ¥515
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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日本史上の芸術家十人をテーマに、ライバルとの相克を描く。 ★★★★☆
歴史上の芸術家十人をモチーフとした短編歴史小説。著者自らが、後記で「ここに収めた主題の美術家たちは、私なりの勝手な解釈の人間である。私は彼らを復原しようと試みたのではない。それは小説の機能ではないし、不可能である。ただ、私の頭の中に出来上がった人物を書いたというだけである。だから、これは一つの歴史小説としてうけ取って頂きたいのである」と書いている。

「運慶」は快慶に対する嫉妬を、「世阿弥」は義持・義教将軍に対する恨みを、「千利休」は秀吉に対する葛藤を浮き彫りにするといった手法で、ライバルとの相克を描いている。

「千利休」と「古田織部」は併せて読むことで、表裏から見た人物像が浮かび上がる。その構成は見事としかいいようがない。
「そうだ。秀吉も利休の茶のあまりに見事な完成に反撥しているのだ。一つの芸術が鵜の毛の隙も無く完全な姿で完成すると、それと叩き壊したい衝動が起る。その発作に苛立つのである。秀吉の自我とはその形であろう。」

一職人から見た陰口をそのまま物語にまとめた「光悦」は、他の作品と一線を画して面白い。

「写楽」の苦悩も興味津々に読めるが終わりがちょっと平凡すぎるか。
「止利仏師」は、著者が調べた挙句、「人間の手がかりを得ること」ができなかったため、「とうとう出来なかった。」ことを小説にしてしまったもの。短編小説の最後にしては、いかにも残念な終わり方だと思う。
美術史家としての清張 ★★★★★
本書は美術史家としての清張の独壇場である。その清張がついに止利仏師を小説にすることをあきらめた。あきらめた経緯を小説にしているのだから、おもしろい。ひらきなおったのである。あの清張の調査能力が限界になった。”止利”という名が独立した個人か、あるいは職人集団の名称かもわからない。そこで思い出したのが、白川静・藤堂明保の漢字論争である。甲骨文や金文を彫り込んだ作者は、不特定多数の集団ではなかったのか。そんな集団が統一した漢字の哲学をはたしてもてるものなのか。そもそもそんな統合司令本部の機能を想定すること自体が可能なのか。そうなるとすべての解字作業は付会ではなくて、牽強付会になる。過去の芸術家(画家や彫刻などの)の絵解きと、漢字の起源というのは、どこかでつながっている。漢字が象形と呼ばれる”絵”を文字にした経緯があるからだ。「宇宙に開かれた光の劇場」上野和男・著という本を読むことをお薦めする。止利仏師ならぬ17世紀のオランダが生んだ偉大な画家・フェルメールが、漢字という絵の中でどう位置づけられるかという、前衛的な記号論がこの本で展開されている。またもし清張だったらフェルメールをどうみるかの試みもなされてもいる。
利休を題材とした小説の最高傑作 ★★★★★
松本清張が日本美術史上に名を残す十人の芸術家を題材に、その芸に打ち込み美を追い求めるひたむきな、そして時に執拗に迫る姿を、松本清張が得意とする綿密な時代考証を元にドラマチックに描き出している。
運慶、世阿弥、雪舟、古田織部、小堀遠州、光悦が特に優れている。特に古田織部は井上靖「本覚坊遺文」「利休の死」、野上弥生子「秀吉と利休」の上を行く、利休を題材とした小説の最高傑作と思った。
へうげものたち ★★★★★
この小説には10編の短編が収められており、読み終わってから振り返ると、実は1本の中編と7本の短編に分けられることに気がつきます。つまり「千利休」「古田織部」「小堀遠州」の短編3編を合わせて、1本の中編として読めるということです。

町人としての茶湯を完成させた千利休。
それを打ち崩し、武家の茶湯に立て直した古田織部。
織部亡きあとを継いだ小堀遠州。

そのような流れがこの3編にはあります。
文庫に収録の順番で読んでゆくとそれぞれの間に他の短編がはさまりますが、この3編は続けて読んだ方が、町人と武家の違い・師弟関係の根底にある残酷さがよくわかり面白いような気がします。

ここからは全くの私見になるのですが…

古田織部を主人公にした『へうげもの』(作・山田芳裕)という漫画がありますが、作者はこの松本清張の小説に着想を得て漫画を描き始めたのではないでしょうか。そう思わずにはいられないほど、両者は歴史に対して切り込む角度が似ていますし、出来事の押さえるポイントが重なり合っています。
この漫画が実に面白く、松本清張の小説の世界観を壊さず、見事に押し広げたものとなっています。
小説を読んで面白いと思った方には『へうげもの』、おすすめです。
「芸術」を極め続けた人たちの「人間」に迫る ★★★★☆
「芸術」を極め続けた人たちの「人間」に迫る10編の短篇集です。

運慶、世阿弥、千利休、雪舟、古田織部、岩佐又兵衛、小堀遠州、光悦、写楽、止利仏師の10人です。

室町末期から江戸初期の人が多いのですが、この時代に「芸術」を極めようとすれば、彼らを庇護する権力者が必要になります。
清張の文章も、そうした彼らの葛藤を描いて行きます。
中には、千利休のように、「町人の茶」に拘り、秀吉の意向と合わず死して行きます。
その弟子である古田織部は、「武家の茶」にそれを移行させます。
こうした短編間の繋がりも興味深いものがあります。

最も意外だったのは、雪舟であれほど苦しんで得た名声だったことです。

最後に取り上げられている止利仏師は、作者のこうした人物の「人間」を追及する苦しみを語る裏話的な小説になっています。

個人的には、前半の3作品が気に入りました。