よしもとばななの魅力が詰まった短編作品
★★★★★
ノスタルジー、家族、恋心、死生観といった、よしもとばななの個性が凝縮されていて、とてもいい作品だと思う。
ダリアとの思い出は、自分が幼いうちに別れた友達を、自然の風景とともに思い起こさせてくれる。
焼きそば屋(お好み焼き屋)さんで働く主人公のひな菊が、健気でかわいらしい。黙々と焼きそばを焼いている姿をつい想像してしまう。
奈良美智の挿絵は、時に愛らしく、時にグロテスクなかたちで世界観を補ってくれる。
作品としては短くまとまっているけれど、ルーズに感じる部分が少なく、じっくり一字一句を落ち着いて眺めたくなる。そうしている自分が心地よくて、時間がゆっくりと流れる。
文庫本であるが、挿絵はカラーで紙質がいいのも好印象。何回も読みたくなる本。
絵がよい
★★★★☆
著者自身も跋文で「奈良さんの絵に引き上げてもらった」と
書いてあるように、奈良さんの絵と見事にコラボしている感じ。
もはや挿画とはいえないかも。
中身は主人公がひな菊だったり、親友がダリアだったり、
何だか少女マンガのような感じ(ネーミングのみ)。
いつものように、主人公と死がとても身近になって
なおかついろいろな人が亡くなるのだけれど、
主人公も言っていたように、人間はみな誰もが死ぬのだから
それほど大それた悲劇と捉えなくてもよい、というような言葉は
ちょっと救いになりました。
ひな菊の淡々とした日々、高春との今後、
いろいろな意味できっぱりしてなくて
含みのあるかわいらしい物語、という印象を受けました。
このまーったりとした調子がよいですな。
★★★★☆
書評書こうと思って2回読んだんだけど、2回目は泣きそうだった。
小さい頃に両親共に失ったり、仲の良い友達がいたり、仕事が焼そば焼く事だったり、いろんな人の家に居候したり、そんな女性が自分の人生を淡々と語ってる小説でした。
大きな悲しみがあると、小さな悲しみって余裕を持って接する事が出来る。そんな感じの淡々とした寂しさがみょーに伝わってきて、2回目読んでいるときは、ジーンときてしまった。
奈良美智さんの絵も妙になじんでいる・・・。怖いくらいに。
悲しい時に読んだら「凹んでばかりいずまったりいこー」と思えるだろうし。調子の良い時に読んだら「調子に乗らずまったりいこー」と思えるすばらしい本だと思うのでした。
淡々と語られる半生
★★★☆☆
奈良美智の挿絵が物語にスパイスをきかせ、ひどくこちらの心情を掻き乱す。
主人公のひな菊が幸福なのか、不幸なのかはわかりませんが、彼女のあり用を、僕は羨ましく思います。
ただ、全体のページ構成は少し不満が残る出来でした。