オンリーワンの「おじちゃん」へ
★★★★☆
小学3年生の正男は祖母と2人暮らし。夏休み、祖母は働きに出て、友達は家族とお出かけ。独りぼっちの正男は遠く離れて暮らしているという母親に会うために、お小遣いを持って家を飛び出す。そんな正男とばったり会い、子供の一人旅を心配した近所のおばさんは、無職でブラブラしている自分の旦那を正男に同行させる。
『母をたずねて三千里』と思いきや、ビートたけし演じるヤクザ風の主人公が旅費を競輪やスナックで使ってしまったため、犯罪まがいの強引なヒッチハイクを繰り返してのハチャメチャ珍道中。旅先で出会う様々な人との心温まる交流というロードムービーの常道を意図的に逸脱していく展開には爆笑。
しかも復路にたっぷり時間を取る。北野武が撮りたかったのは、母をたずねる往路よりも、むしろ帰る途中のキャンプだったのではないかと思える。主人公の無軌道な行動によって様々なトラブルが発生する往き道は、微笑ましくはあるが、主人公は意識的に正男を楽しませているわけではない。結果的に面白いことになっているだけだ。
だが帰り道は違う。主人公は正男に“夏休みの楽しい思い出”を作ってやろうと決意する。恐ろしく真剣に笑いを取りにいくのである。短気で荒っぽくいい加減な、そして不器用な男が必死になって少年を笑わせようとする。
キャンプで主人公(北野武)がバイクの2人組(たけし軍団のグレート義太夫・井手らっきょ)に理不尽な要求を突きつけていじり倒す様は『スーパー JOCKEY』などビートたけしのバラエティー番組のノリをそのまま持ち込んだ趣。馬鹿馬鹿しい遊びに興じている姿は本当に笑える。
観客も笑い、正男も初めて子供らしい笑顔を見せるようになる。
道中、正男は夏休みの宿題の絵日記(?)に、旅で知り合ったおかしな「おじさんたち」を描いていく。楽しく親切な「おじさん」たちだが、彼等は結局は通りすがりの人なのであり、すぐに別れる存在でしかない。だから普通名詞の「おじさん」なのだ。この伏線がラストの名台詞を輝かせる。
主人公と少年、厄介者の2人は最後の最後に、心を通わせる。泣けます。
面白い組み合わせ
★★★★★
如何にも薄幸で陰気な子供とちょっと893な人情も持ち合わせたビートたけしの演じる菊次郎の組み合わせは非日常的で面白い。菊次郎の発言は常に直接表現です。「それいいなあ、くれよ!」「それ、詐欺じゃねーか!」とか。腹が減ったら畑の物をかまわず失敬する。ビートたけしの親父さんはこうだったんですね。公園で登場する変態男、ハーレーに乗るデブとタコ、登場人物が本当に特徴的で見ていて退屈しませんね。
菊次郎と正男の愉快で切ない夏休みが始まる
★★★★★
友達はみんな旅行に出かけ、夏休みを一人で過ごすことになった正男。
おばあちゃんと一緒に暮らしている正男は、おばあちゃんの仕事が忙しいため、
どこにも行けずにいた。
そんな彼は、以前から気になっていた自分の母に会いに行こうと決心する。
しかし、小学生一人で探すことは困難で、お金も十分になかった。
正男と仲の良い近所のおばさんは、駄目人間の旦那菊次郎を同行させることにした。
正男だけでなく菊次郎の人生を見つめなおすきっかけも与える、二人の旅。
一人ぼっちの少年は、愉快な大人達と遊んでいくうちに、ひとつ成長した。
正男や菊次郎のシーンごとの表情は、とても印象的で深い。
また、大きなハプニングがあるわけでもなく、さりげない登場人物達の言葉、仕草が
見ているこっちの涙を誘う。
シーンの間間に入る絵日記風のデザインやユニークで感情的な表現、
さらに登場人物を際立たせている小道具は、映画というより
詩的フィルムと言った方がしっくりくる温かい作品を作り上げている。
個人的に正男の母と出会った時の、菊次郎の顔は、一番頭に残るシーンでした。
夏
★★★★☆
夏になると必ず見てしまいます。久石譲のあの音楽と田舎の緑の景色を見ていると癒されますね。あと途中眠くなって うとうと しながら見ると ものすごく気持ちいい。よく真剣に見ずに 気分で流す事もあります。 勿論 映画は大好きです。
今の時代だから見てほしい
★★★★★
ニュースを付ければ実の子供を信じられないような形で虐待したニュースが溢れる昨今、菊次郎はマサオという少年と出会い豊橋まで向かう。
その間には、マサオが何度も危険な目に遭いそうにあったりしても菊次郎は必死でマサオを助けようとしている場面がたくさん出てくる。
映画が進むに連れて菊次郎は、忘れてきた純粋な心を取り戻し、マサオは少しずつ成長している。
マサオに取っては一生忘れられない夏休みになったに違いない。
また映画には、夏を思わせる鬼灯や江戸風鈴や向日葵が出てくるのも見物です。最後に菊次郎がマサオを抱き締めたシーンは涙が止まりませんでした。