このカナダのパワフルでプログレッシブな三人組は、結成以来一貫して5枚目のアルバムごとに長たらしいライブコレクションをリリースしてきた。1981年に発表した『Exit』はラッシュの2枚目(そして最高)のそんな作品で、キーボードやシンセサイザーが単なるアクセントから中心の音源に移行する前の、音楽的にも(そして商業的にも)絶頂期の彼らの様子を捉えている。このツアーを始めたのは『Moving Pictures』をちょうど発表したばかりで、このアルバムは長い曲集を敬遠し始めた動きの延長にあり、より合理化された作曲法が特徴だ。ところが『Exit』は、曲がりくねっていたり、フュージョンに傾いていたり、名作インストゥルメンタル(YYZ, La Villa Strangiato)だったり、広範囲にわたるSF超大作(Jacob's Ladder, Xanadu)、センチメンタルなバラード(聴衆と声を揃えて歌うCloser to the HeartやThe Trees)、それに世界中のベスト曲を代表する緊張感の高い歌(Free Will, Tom Sawyer, Spirit of Radio)などを完璧に混ぜ合わせたものになっている。これは音楽的にみると、この3人にとって膨大な量のサウンド(特にゲディー・リーの膨大なベースのメロディとニール・パートの蛸のようなパーカッション)を生み出している。歌詞の面から言えば、パートの幻想曲は韻文もどきだが、それでも十分に詩的であり、未熟な知恵かもしれないが、賢いことには違いない。 -Marc Greilsamer