組織の中の人間の悲劇
★★★★★
都会的なスマートさと野獣のような精悍さ。野太さ。優しさと冷酷さ。傲慢不遜でありながら漂う哀愁。自分にも他人にも厳しい土方歳三の人間像は、一筋縄ではいかない。非常に複雑で、ざらざらしている。決して善人ではない。しかし人を引きつける魅力に溢れる。栗塚旭は、知的で端整な美貌と洗練された所作、姿の美しさを持っている。しかしこの土方という何とも複雑な味わいの男を、何故こうも見事に演じているのだろう。栗塚は、土方を演じるために生まれてきたのかも知れない。そして沖田総司。ドラマの中で呼ばれる「そうし」という清音が、この純潔で少年のような男によく似合う。だがこの男にもそこはかとなく無常感が漂う。島田順司。彼以外の沖田は考えられない。
「第11話 槍は宝蔵院流」 原作どおりの面白さ。原作を生かした脚本の精妙さに驚く。左右田一平の斎藤一は天下一品。雨中の斎藤と谷の対決、それを見守る土方は一幅の絵。
「第12話 紅花緒」 時代の流れの中で、武士を夢みる男とその家族の悲劇。組織の非情さが胸を打つ。そっと置かれた履物の花緒が、本当に赤くみえる。
「第13話 強襲十津川屋敷」 風雲の中で功名心に燃える若者たちを待ち受ける、思惑。巧みに利用される若者。緊張感ある筋立てと迫力の殺陣で、最後まで目が離せない。
「第14話 狂った盃」 山南の迷いが生む悲劇。後の山南の脱走と油小路の悲劇への伏線となる。