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希望の国のエクソダス (文春文庫)

価格: ¥700
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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   バブル崩壊の2年前、著者は『愛と幻想のファシズム』で、戦後日本が作りあげてきたシステムに拮抗する「狩猟社」を登場させ、世界経済と格闘させた。13年後、教育をテーマにした本書で、著者は再び経済と出あう。金融経済の専門家、文部省官僚などへの3年にわたる徹底した取材から、正確な情報に裏打ちされた話題の超大型長編。

   2002年、失業率は7%を超え、円が150円まで下落した日本経済を背景に、パキスタンで地雷処理に従事する16歳の少年「ナマムギ」の存在を引き金にして、日本の中学生80万人がいっせいに不登校を始める。彼らのネットワーク「ASUNARO」は、ベルギーのニュース配信会社と組んで巨額の資金を手にし、国際金融資本と闘い、やがて北海道で地域通貨を発行するまでに成長していく。

   少年犯罪の凶悪化、学級崩壊など、さまざまな教育問題が噴出し、「学校」「文部省」「親」と責任の所在をたらい回しにする世間を尻目に、子どもたちは旧来の前提に縛られた大人の支えを必要としないことを立証する。『愛と幻想のファシズム』では、システムの破壊を目的とした狩猟社は、その過程で自身がシステム化していくという自己矛盾を抱え崩壊した。「ASUNARO」もまた崩壊の予感が示唆されているが、今回、著者はその手前であえて筆を置く。子どもたちには「希望」を与え、大人たちには「絶望」を突きつける。「ASUNARO」に拮抗するシステムを、今度は社会や大人たちの側が提示する番である。(中島正敏)

ポップな近未来小説 ★★★★★
おもしろい。
『愛と幻想のファシズム』ほど硬くないけど、逆に文章が洗練された感じになっている。
装丁もかっこいいです。

作中で描かれる少年達の印象に「無機質さ」感じた。
村上龍の作品を初期の頃から読んでいるが、「熱気」みたいなのは良くも悪くも感じられない。
「熱気」というか、読者に異様なパワーを与える、とでもいったらいいのか……。

柔らかく「経済」のお勉強という、How toの要素もある物語です。
おもしろく、それでいて考えさせる作品です。



13歳のハローワークまでの道のり ★★★★☆
本書が書かれた時、『バトルロワイヤル』、「同時多発テロ」、「日韓ワールドカップ」など
村上龍がきっと知りえたことを村上龍流に書いた本と言えよう。
初期の作品に比べると文学性は劣る。
エンターテイメント性、或いは社会問題をテーマにする作品の石杖となった作品と思える。
13歳のハローワークやスポーツの本ばかり書いている近年は、
自分はもう若くないから、夢をもつもの、或いは子供などに、
未来を切り開く為の社会問題を切り口にしたエンターテイメント作品と言えよう。
預言書 ★★★★☆
はじめ、編集者がライターによく言う「嘘でもいいから冒頭20枚は面白くしろ(立ち読みで売れるから)」を具現化してしまった小説ではないかと不安だった。

 不登校少年「ナマムギ」が、日本を出て中東の地雷除去活動に身をやつし、面白がって取材に来た日本のマスコミを殴って英雄になる……という衝撃的なエピソードから物語は始まる。しかしその後は、ナマムギの「ナ」の字も出ず、不登校中学生たちがネットビジネスを立ち上げるまでの、えんえんハウツー書。こんなの読んでいる暇あったらドストエフスキーでも読んだほうが……となんど投げ出そうとしたか。
 しかし、中学生たちが大人の束縛からも日本社会からの呪縛からも解き放たれて北海道に「新しき村」(笑)を作るあたりから、話は小説っぽい盛り上がりを見せる。彼らの作った「村」は、土建屋のおじさんたちが立てた、コンビニと高速道路だけの地方都市ではない。風力発電の風車がなだらかな丘につらなり、シンセサイザーのような風音が街を包む。その風景が、まるで見たもののように心に残った。

いろいろ文句も書きましたが、この話が10年前に書かれたことに驚きです。失業率の増加、意味のない政権交代、地方経済の疲弊、経済大国からの凋落など、今の日本が逐一書かれている。もちろん、筆者に超能力があったわけではなく、緻密な取材から予測されたことなのだと思います。経済学者は10年、20年先を見ているから。

「取材ノート」も読んでみようと思います。
真面目だった村上龍 ★★★★☆
村上龍については、「鼻もちならないバンカラ」という一方的な思い込みを
長い間持ち続けていたわけですが。
このところテレビ番組「カンブリア宮殿」を見るにつけ、真剣に国を憂う
おじさんとしての村上龍に、意外な親しみやすさを見つけるにいたったと。

当てずっぽうで読んでみた一冊でしたが、これは間違いなく「真剣なおじさん」に
なってから書いた作品ということがよくわかります。「初期の村上龍のほうが
もっとむちゃくちゃでよかった」とこぼす人は、私の身の回りにもいました。

日本の中学生80万人が一斉に学校に行かなくなり、ネットワークを通じて
連携をとって、次第に資金力発言力を高め、最後には北海道に移住する
というファンタジー。この過程が、現代の経済の実態に即して描かれているので、
かなりしっかりした経済講義が作品中に頻繁に展開されることになる。

講師は主人公の恋人由美子。主人公との子を堕胎した喪失感を埋めようと
するかのごとく経済の勉強をはじめ、ライターとして精力的に活動している。
新聞を読んでぼんやり経済の話が分かるというレベルでは、かなり難しく
感じると思うし、主人公もライターの割には経済音痴という設定のようで、
由美子の話を呆然と聞くこともしばしばだ。著者としても、読者が主人公の
ように呆然と読むことを想定しているんじゃないだろうか。

そんな斜め読み混じりの読後、印象に残るのは、中学生の集団不登校、
経済への大きな影響力についての、日本人の反応の鈍さの描き方だ。
別に村上は、読者に経済の勉強をもっとしろということが言いたいのではなく
(ちょっとは言いたいのかもしれないが)、いろいろなことに対しての
危機感や感受性が日本では摩耗しすぎているのではないかという焦燥
こそを表現したかったのではないか。

ま、自分で理解できた部分をつなげるとそういう解釈になってしまう
だけなのかもしれないが。わかんないところは主人公と同じように、
素直に呆然としましょう。生真面目に読まなければ、結構面白いと思う。
バカな大人が中学生を焚きつけるために書いた空疎な本 ★★☆☆☆
アスナロってまるで、ポルポト派みたいだと思ったな。
カンボジアで殺戮を繰り広げたポルポト派の中心メンバーは、十代の少年少女たちだった。
彼らは親を親戚をそして教師たち大人を殺しまくった。
その結果が、今のカンボジアってわけ。これは行ってみたらすぐに理解できる。
ここに書かれている日本経済の近未来予測のほとんどは、ハズレている。
まあ、日本の中学生たちが、この本を真似ることがなかったってことは、そこまでバカじゃなかったってこでもあるわけで、私としては一安心だ。