日本の抱える問題を浮き彫りにしつつ、エンタテインメント性をもった良作
★★★★☆
北朝鮮の一部の軍部が策略で、北朝鮮反乱軍を名乗り、福岡を占拠。日本の反乱分子とも言える若者たちが立ち向かっていく話である。このように書くと、とてもありえない話のように思えるが、村上龍の綿密な取材と描写により、起こってもおかしくないことだと知らされる。日本の抱える問題を浮き彫りにしつつ、エンタテインメント性をもった良作だ。
村上龍らしく、でも新しい
★★★☆☆
まず勘違いしてはいけないのが、村上龍の作品は、麻生幾のようにドキュメンタリー性の強い作品でもなければ福井晴敏のような軍事的サスペンスでもない(ヒュウガウイルスはこの要素も強いけど)。基本的には群像劇がその持ち味だ。
その群像劇としてだけなら素晴らしい作品だろう。彼にしか出せない独特の雰囲気を十分に堪能できる。最後にもう一度当事者達の詳細な心理描写を見たかったが、これはこれで完成されており、消化不良な感じはしない。以下はそれ以外の分野について。
政治の分野では、さすがに現実の政治家はここまでバカじゃないと思いたいが、今の民主党政権ならやりかねんと不安になる…。そういった意味ではリアリティも…。
北朝鮮側の描写についても、かなりの取材をしたのだろうと思わせる深い描写が見られる。
経済や軍事的な分野は、ちょっとお粗末。福岡周辺や警察、自衛隊への取材は表面だけではないかと疑いたくなるほど簡単な間違いが多く、せっかく物語にのめり込んでも一気に冷めてしまう。
群像劇としては是非読んでほしい作品だが、特殊部隊とのドンパチを見たい人にはオススメできない。
最後に、北朝鮮の船団が接近するなか、対 空 戦 闘 機 のF-15は 滑 走 路 の な い 春日基地で何に対して厳戒態勢をとっていたんだろう(笑)
堕落しきった日本人への警告書
★★★★★
社畜のサラリーマンは疲れきっており、何も考えることができない。
朝鮮人に占領されても、へらへらと笑みを浮かべるだけで、現実を認めようとしない日本人。
経済は崩壊し、日本は世界的地位を失った。
誰も助けてはくれない。
日本の価値など金だけでしかなかったのだ。
この本を読了した直後、私はとてつもなく悲しい気分になった。
強くなりたいと思った。もっと勉強したいと思った。
村上龍は、「立ち上がれ!日本人」と我々に呼びかけているのかもしれない。
私の胸にはしっかりとその思いは届いた。
とても良い本です。
ぜひ読んでください。
考えろ
★★★★★
村上龍氏が発するメッセージは、とてもシンプルだ。
考えろ。考えるために、情報を集めろ。
疑え。その情報は操作されてないか?操られるな。
恐れるな。恐怖は判断を鈍らせる。恐れを冷静に分析しろ。
成功するためではない。成功なんて幻想だ。金も名誉も一瞬で消える。
ただ生き延びるために、考えろ。そういう時代なんだ。
日本の敗戦を振り返れば「五分後の世界」を書き、
疫病が流行すれば「ヒュウガ・ウィルス」を書く。
前の世代が妄信していたものに疑問を持ち、人が目を背けるものに焦点を当て、
自分なりの結論が出るまで追求する。
日本にとって北朝鮮とは何なのか。
恐怖か?軽蔑か?それは何を理由に生まれた感情なのか?
浅はかな感情を振り切り、現実だけを見詰めろ。
冷静に、最悪の事態に備えろ。
多くの小説や音楽が、ここ一週間程のスパンの恋愛しか語らない。
あるいは「昔は良かった」的な懐古主義、感傷的な内容だ。
それではこの時代を生き抜けない。
常にエッジに立ち続ける村上龍氏の危機感は、一読に、いや何読にも値する。
面白かった!気持ち悪いけど。
★★★★★
長い本なので俺読めるかな?と思いましたがサラサラ読むことができました。
最近虫がいる!!みたいなことをコリョの兵士が言った時に「シノハラだっ!!!」っと鳥肌が立ちました。
屈強で鍛え抜かれたコリョの兵士達が、いや、だからこそかもしれないが、日本のユルイ空気の中で統率力や団結力が薄れていく過程も私は楽しめました。
気持のよい本ではないですが面白かったです。