結末は読み手それぞれの心の中で
★★★★★
やはりこの作品は藤原伊織を読み尽くした人以外にはオススメできません。何と言っても結末がない訳ですから・・・。
ただ、藤原作品のファンだったからすれば、よくぞ出版してくれたと言える作品なのも間違いありません。結末は読み手側それぞれで考える事が出来る訳ですから。
つくづく惜しい作家を亡くしたと思いますが、死の直前までこんなにも緻密な作品を書き続けたことは本当にすごいと思います。恐らく最後には我々が思いもよらない結末があったのでしょう・・・。
最後の「オルゴール」に見る人生の悲しさは著者ならではの作品だと思います。
永遠に解けない謎……未完だが質は高い
★★★★★
2007年7月、藤原伊織が亡くなった直後ぐらいに出された本の文庫化だ。
「遊戯」「帰路」「侵入」「陽光」「回流」と続く連作短編集で、
おそらくはこのあと何編かが書かれて、1つのストーリーか完結したはず。
作品のほとんどが死の前年、前々年に書かれている。
精神的にも肉体的にも大変な時期だったろうに、
ここまでの作品を書き続けたのはすごいと思う。
だが、最後の「回流」で、物語は唐突に切れる。
自転車に乗った謎の男、拳銃……これらの謎を残したまま。
私は単行本のときも文庫化されても読んだが、
まるで連続ドラマが途中で打ち切られ、
「結論」がわからないまま……という感じである。
しかし、「これからどうなるだろう」という期待を残していくあたり
いかにも藤原伊織、という気がする。
「ダナエ」などとあわせて、読みたい本だ。
表紙の「自転車」と弾丸……これが何を意味するのか。
なお、この他に、短編「オルゴール」がある。
これがなかなかいい。
ともすれば「遊戯短編集」にだけ目が行きがちだが、
「オルゴール」の藤原伊織の世界は、ファンを満足させる出来だと思う。
改めて合掌。
未完の作品
★★★★☆
著者が病気で亡くなったため未完となった作品であり、続きが読めないのはとても残念。相変わらずテンポがよく、CM業界の詳細を丁寧に描きながら少しずつ物語が展開されていくのだが、短編としても読めるので、途中まででも十分に楽しめた。
未完のため星四つ
★★★★☆
残念です。おそらく傑作になったでしょう。主人公の渋いかっこ良さ、プロットの興味深さ。ファンとしては星5つ付けたい、でも未完のため星四つ。
藤原伊織さんの文章は音楽を聴くよりも音が心に響きます。秀逸です。
最後のミステリー
★★★★☆
ただ残念です。
気骨があり、非常に魅力的な文章を書く私の好きな作家藤原さんの遺作。
未完で終わってしまった。
藤原さんの小説の主人公はいつも格好よすぎる。今回の派遣会社社員の本間も然り。さめていてしかしやさしくクレバー。本当にこんな男性実際にいたらノックアウトです。
そしてヒロインのみのり、インターネットゲームで知り合った二人を軸にストーリーは進み、そこにストーカーと思しき不気味な自転車の男の影、父が残した拳銃、二人の関係、まだまだ話は続いたと思うのですが、書き残したまま天国に旅立たれた藤原さん。
藤原さんの小説で大好きだったのはストーリーもそうですが、登場人物の描き方でした。
今回のみのりも小説から飛び出してきそうな躍動感、そして謎の男の不気味な存在感。そして本間の孤独な優しさ。
とても残念ですが、最後まで自作の小説の主人公のごとく素敵だった藤原さん
今まで素敵な小説をありがとうございました。