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ダックスフントのワープ (文春文庫)

価格: ¥500
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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物語を語ることの癒し ★★★★★
藤原伊織さんの作品の中でも(表題のダックスフントのワープが)特に個人的に好きな作品です。
そしてなぜこんなにもこの作品が気になるのか考えてしまいます。
なにせ登場人物はそれぞれ(世の中の平均的な人よりも)はるかに
多くの欠陥をかかえている人物ばかりだし、物語はとても救いようのない
結末を迎えるというのに・・。
作者が”僕”を通して語るダックスフントの逸話と、作者の語る僕をめぐる
大分混沌とした静物画的な?物語の世界の絡み合いのなかで、ストーリーは展開され、
そのなかで唯一まっとうに、「邪悪の意思の地獄」に「希望」をもって立ち向かう、
ヒーローの役柄を与えられた両方のストーリーの「まっとうさ」の象徴、老犬、ダックスフント。
現代社会において多くの人が命にかえて守るべき、”意思のちから”をもたない様に見える
中で、‘死‘よりも大切なもの(それはとても「悲劇的な宿命」と呼ぶのにふさわしいけれど)がそこにはあって、
そして結局どれだけまっとうでない世界でも、自ら物語を造り上げることによってのみ多分”僕”も
これからも救われてゆくのだろう・・
だからこの物語は悲劇なんかではないんだと最終的に思わせる、大変素晴らしい作品です。
この短編で文学賞をとられたことがとても良く納得できる作品と思いました。
不思議な透明感 ★★★★★
実家に忘れてきたので、2冊目を買いました。透明感を持ちながらも、ずっと心に残り、また読みたくなります。
メインストーリーに挿入されている、主人公の語る「ダックスフントのお話」。そこだけ取り出して一冊の絵本にしたいほど、美しく鮮烈な印象を受けました。藤原伊織さん、童話作家になってほしい。。。
ゆるーい感じ ★★★☆☆
表題作含め、掲載されている作品はどれも人付き合いが苦手で、なんとなく独特の世界観を持っているうんちく好きというか屁理屈好きな感じのする人が主人公。

どの作品もどっかで誰かが死んじゃったり、いやな思い出を胸に抱いているのに、すごく軽い。

作品の中に描かれている日常は、とても自然で、特殊な状況でも、ありえるかな、と思えたりして「愛すべき日々」という感じなんだけど、あまりにもさらりと死んでしまうこととか、大切なものを失うこととかが書かれていると思う。
大げさにしなくてもいいとは思うけれど、そこまでさらっと流しちゃうのもどうもなぁ・・・という感じです。

★★★★★
1日10ページは辞書を読んでいて、難しい言葉を使う小学生のマリに、その家庭教師である主人公が話して聞かせる、ワープしたダックスフントの話と、現実の話とのふたつで成り立つ話。

わたしはこれが、今まで読んだ中で一番印象深くて、一番好きな本です。思慮深くてテンポがよくて、ユーモアもあって、ものごとの本質をついているような気がする。奥まで読めばきりがない。でも、この本は小学生の子供でも読めるんだと思うんです。おとなが読んでもこどもが読んでも楽しめる作品。そういうのが多分すぐれたものなんだと思います。映画とかにも共通することだけど。おすすめです

心地よい諦観 ★★★★☆
人に心を開かない少女の家庭教師がダックスフントのワープの話を聞かせる。そこから彼女は何を学んだのか。表題作は読後悲しさとともに、私に何か温かいものを残してくれた。残る短編、「ネズミ焼きの贈り物」「ユーレイ」も佳作。 登場人物全員に漂う奇妙な諦め、静けさ。でもそこにあるのはけして絶望ではなく、皆何かを失いながらも前を向こうとする。人物が不思議と魅力的だった。 読んだあとに深く考えごとをしたくなる。そんな本。