奇妙に乖離する違和感
★★★★☆
さすがにロス・マクドナルドに心酔するだけあって,複雑かつ華麗な仕上がりではある。入り組んでいるのにスピーディーに頁を繰らせるあたり
も見事だが....
如何せん恣意的すぎる。。音楽ネタなんかにそれが顕著に出てるきがするが,肉付けが下手なんだなぁ〜骨格作りは巧いのに。勘が鋭ければ
一瞬で犯人判っちゃうよな。。そもそも一番不思議な点は,作中の筋の上では名探偵になってる綸太郎は読者の客観的な目からみれば全然
名探偵じゃない事実なんだよな。
法月ほど主張していることと,やってることが違う作家も珍しい。
法月作品では一番好き
★★★★★
法月綸太郎さんの作品の中では一番好きな作品です。
探偵法月綸太郎は相変わらず失敗や挫折を繰り返しながらの探偵作法ですけど。私は…正直既に中盤頃には真犯人が分かってしまいました。しかし、この作家さんの作品の面白さは単なる謎解きだけではないので。色々な伏線が相変わらずあちこちに散りばめられていて、うっかりしてはいられない。ただ、何か最後は可哀相でしたね。一番可哀相だったのは勿論頼子ですが…その父もまた母も…皆が決して幸せでは結局なかったですから。憐れでした。骨肉の倫理なのか、血族間の修羅の方が厄介なようです。人の心の深淵は…やはり底知れぬ闇です。兎に角、私はこの作品は法月作品の中ではなかなか作中にのめり込める作品でした。どちらかというと理屈や理論の多い作家さんなので、なかなか作品を情緒的に味わうことが難しいので。
家庭の悲劇と名探偵の破滅
★★★★★
「子どもを喪った父親の復讐」を綴った手記から始まる構成は、
ニコラス・ブレイク『野獣死すべし』に倣い、扱われる事件の
テーマが、家庭の悲劇や病理であるところは、ロス・マクを
意識した、と作者自らが語る本作。
しかし、そうした、サスペンスとハードボイルドの手法を融合させることで、
最終的に作者が描き出すのは、名探偵の思考を先読みし、それを自らの
計画に取り込んでいく、メタ犯人(超犯人)の存在でした。
名探偵は、誰も救えず、事件の黒幕を告発できないどころか、
人びとに破滅をもたらす歯車にすぎなかった――。
名探偵の特権性に対する作者の懐疑のまなざしは、必然的に、
ミステリという形式そのものにも向けられていくことになります。
浮上する「後期クイーン的問題」
★★★★★
「子どもを喪った父親の復讐」を綴った手記から始まる構成は、
ニコラス・ブレイク『野獣死すべし』に倣い、扱われる事件の
テーマが、家庭の悲劇や病理であるところは、ロス・マクを
意識した、と作者自らが語る本作。
しかし、そうした、サスペンスとハードボイルドの手法を融合させることで、
最終的に作者が描き出すのは、名探偵の思考を先読みし、それを自らの
計画に取り込んでいく、メタ犯人(超犯人)の存在でした。
名探偵は、誰も救えず、事件の黒幕を告発できないどころか、
人びとに破滅をもたらす歯車にすぎなかった――。
名探偵の特権性に対する作者の懐疑のまなざしは、必然的に、
ミステリという形式そのものにも向けられていくことになります。
法月氏全長編レビュー
★★★☆☆
法月氏の長編の中でも『生首に聞いてみろ』が出版されるまでは
代表作とされてきた作品が本書だ。
だが個人的な感想としては、
読み物として面白くない事はないが、法月氏の持ち味があまり
生かされていない平均的な作品のような気がする。
島荘よろしく、手記を見た探偵法月がその違和感から事件の真相を見抜いて
いくという展開だが、まずこの手記に違和感を感じた理由がいまいち
パッとしない。
最終的に提示される真相もいまいちパッとしない。
氏の魅力の一つである会話のやりとりの面白さも今作ではパッとしない。
要するに全体的にパッとしない。
だが推理小説ファンでなくとも楽しめるという意味では彼の作品の中でも
1、2を争うだろう。
法月を読み始める取っ掛かりには良いかもしれない。