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法月綸太郎の新冒険 (講談社文庫)

価格: ¥700
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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〈知恵と工夫のエンタテインメント〉 ★★★★★
◆「背信の交点」

  「あずさ68号」と「しなの23号」は松本駅で
   たった一分間だけ、同じホームに停まる。

  その際、それぞれの車内に居た男女が服毒死した。

  状況と、死んだ男の妻の証言から心中であると考えられたのだが……!


  〈鉄道〉と〈心中〉という松本清張『点と線』を彷彿とさせる趣向が採られた
  本作ですが、目指されているのは、あくまでコアなパズラーです。


  被害者の座席についての些細な矛盾から、論理的な手続きを踏んで、
  事件を解明していく手際は、著者の面目躍如というところ。

  と同時に、偶然の要素を事件に介在させることで、最後の最後まで、
  真相を宙吊りにし、読者を惹きつける演出も心憎い限りです。
  


◆「世界の神秘を解く男」

  ポルターガイスト現象が起こる家で超心理学者が
  シャンデリアの下敷きになって死んだ。

  果たして超能力現象によるものなのか――?


  「超能力」のタネとしてのトリックは、拍子抜けするぐらい単純。

  しかし、超能力少女の家庭事情や軽薄なマスコミの生態、そして
  封建的な学会の体質といった生臭い人間関係に溶かし込むことで、
  じつに効果的かつ印象的なものとなっています。



◆「現場から生中継」

  殺人事件があった時間、容疑者はテレビの生中継に
  映っていて、その上、携帯電話で友人と話していた。

  鉄壁のアリバイがあると思われたのだが、その友人が
  容疑者との通話中に「(テレビの)テロップの下を見ろ」
  と言われたと証言する。

  テレビを観れなかったはずの容疑者が、そのような指示を出せる
  はずはなく、アリバイは崩されたかにみえたのだが……。


  衆人環視のアリバイをいかに崩していくか、というモチーフかと
  思わせて、終盤で鮮やかに反転させる手ぎわはじつに見事です。



◆「リターン・ザ・ギフト」



  
  
愚直なまでに純粋パズラー ★★★★★
◆「リターン・ザ・ギフト」

  交換殺人が題材。

  中盤、事件の仮説を四通りに場合分けし、精緻な論証を加えたうえで、
  結末において意外性と納得性を兼ね備えたホワイダニットの解答を提示
  するという快作。



◆「身投げ女のブルース」

  ビルの屋上から投身自殺しようとしていた女を保護した葛城警部。
  のちに女は、雇い主の占い師を殺したと供述するのだが……。


  法月綸太郎が登場せず、推理だけを法月警視に伝えるという異色作。

  単純かと思われた事件に、驚くべき計略が仕掛けられています。
  犯人の捨て身のトリックと、人間味あふれる動機が印象的。



◆「背信の交点」



ひねり ★★★★☆
 1999年に講談社ノベルスとして出たものの文庫化。
 法月綸太郎ものの短編が5編、収められている。『パズル崩壊』の葛城警部も出てくるが、まさか、こんなことになるとは。
 いずれの作品も完成度が高い。トリックもプロットも申し分ない。とくにすごいのはプロットの捻り方。短編なのに二転三転するのだ。しかも、最後に行き着く結末は、これしかないというもの。どこまで捻ることが出来るか、遊んでいるようだ。
 この捻りに溺れて欲しい。
なかなか面白かった ★★★★☆
長編には長編の面白さがあるんだろうけど、
私にはこのくらいの数の短編集が好み。
短すぎず、長すぎず、一話ごとの内容がしっかりしていると思う。
きちんと読み進めていけば、綸太郎ほど細部にわたらなくとも
トリックが分かると思うので、
自分なりに犯人やトリックを当てながら読む楽しみもあるし、
そうかと思うと「作者にやられた!」と設定の上質さに
思わず笑みがこぼれることもあるんじゃないかな?
物足りないなあ ★★★☆☆
短編ミステリ5編+1(プロローグみたいなものですね)を収録、どの作品も、いかにも法月綸太郎らしくガチガチの本格で、読み応えはあるのですが、読み終わってみると、肩透かしをくわされた感じ、ケレン味があるわけでもなく、何か物足りず、可も無く不可も無くといった印象。テレビで放送された名探偵の真似をさせたりと、ところどころで綸太郎をおどけさせたりしてはいるのですが、これも失敗、別にそんなことさせなくとも、綸太郎と父親の警視とのやりとりだけで充分に楽しいのに。
ますます長編が待ち遠しくなりました。