名探偵法月綸太郎シリーズ。巻末で作者自身が吐露しているように、プロットや文体にはかなりの模倣はある。これは小説内に出てくる義弟の小説家のセリフの端々にもどこか作者自身の作家としての正直な吐露が感じられる点にも出ている。しかしながらそれを自身で語る法月綸太郎氏は正直にして正々堂々の作家である。
そういった要素を加味しても本作は見事な出来映えである。どんどん複雑になって行く現代の家族の形態と、それを形成していく面々の心情を実に見事に表現している点を高く評価したい。プロットや文体よりも、家族を組成している面々の描き切り方が見事だ。
子供とは何か。家族とは何か。正直な自分とは何か、を考える傑作である。