雪の処理が難問
★★★★☆
法月綸太郎の長編第二作。まさに王道と呼べる舞台設定に状況設定。そしてそこで演出される殺人劇の謎に挑むは,作者が大好きなクイーンの
基本設定に倣い創造された法月親子!
デビュー作となる前作でみせた前衛的な作風からしてみれば,まるくなった感も受けるが何々侮れませんよ。読み応え充分です。
だからといって何も革新的なトリックが本書に使われているわけではないが,アリバイの問題・鍵の問題・雪の問題と,それぞれの要素を
圧倒的なアレンジセンスで複雑に組み立てられる手腕が凄いのだ!特に大前提にして最難関にもなる雪の要素はお見事。不可能に秩序を与えて
可能にするさまが実に鮮やか。
ほか,キャラクター造型はともかくとして,お決まりで陳腐な愛憎劇の範疇なんかには収まらない,登場人物間で心と理性が蝕まれるような
関係性を作り上げてみせた事に関して個人的にはとても高く評価したい。
あまりにシンプルで堂々としたタイトル。。この響きにピンと来た方,雪で構築されたこのパズルにぜひ挑戦してみてはいかがですか?
純粋に本格ミステリ
★★★★★
思わせぶりな招待状に導かれ、信州の山荘〈月蝕荘〉を訪れた法月警視。
そこで警視は、自分を呼び寄せた篠塚真棹という名の女性の死に遭遇する。
真棹は、庭の離れの寝室で縊死体となって発見されたのだが、離れと
本館の間に積もった雪の上には、発見者の足跡以外、残されていない。
しかも、離れの入り口には鍵が掛かっており、開錠するに
は、被害者とその夫だけが持つ、特殊な鍵が必要だった。
この二重密室から、犯人はいかにして姿を消したのか?
メイントリックは、有名な《足跡》トリックを状況
設定やアリバイ工作で巧みにアレンジしたもの。
また、犯人特定のロジックには、残された足跡のサイズをもとにした
クイーン流の消去法が用いられており、古典本格へのオマージュを
感じさせる、いい意味でオーソドックスな作品となっています。
しかし本作は、単に古典へと回帰したウェルメイドな作品というだけにとどまりません。
エピローグを二つに分け、本編の前後に配置することで
ミスディレクションを仕掛けるというトリッキィーな構成や、
クイーン作品における父子関係を踏襲しつつも、そこに
陰影を帯びさせた綸太郎と警視の関係性などからは、
本作以降の著者の作風が暗示されているといえます。
探偵・法月綸太郎のデビュー作
★★★★★
思わせぶりな招待状に導かれ、信州の山荘「月蝕荘」を訪れた法月警視。
彼はそこで、自分を呼び寄せた女性・篠塚真棹の死に遭遇する。
真棹は、庭の離れの寝室で縊死体として発見されるが、離れと本館の
あいだに積もった雪の上には、発見者の足跡以外、残されていない。
しかも、離れの入り口には鍵が掛かっており、開錠するには、
被害者とその夫だけが持つ、特殊な鍵が必要だった。
この二重密室から、犯人はいかにして姿を消したのか?
メイントリックは、有名な《足跡》トリックを
状況設定やアリバイ工作でアレンジしたもの。
また、犯人特定のロジックには、残された足跡のサイズをもとにした
クイーン流の消去法が用いられており、古典本格へのオマージュを
感じさせる、いい意味でオーソドックスな作品となっています。
しかし本作は、単に古典へと回帰した、ウェルメイドな作品というだけにとどまりません。
エピローグを二つに分け、本編の前後に配置することで
ミスディレクションを仕掛ける、というトリッキーな構成や、
クイーン作品における父子関係を踏襲しつつも、そこに
陰影を帯びさせた綸太郎と警視の関係性などからは、
本作以降の著者の作風が暗示されているといえます。
白い僧院はいかに改築されたか?
★★★★☆
作者の2作目にして、名探偵・法月倫太郎の初登場作品。「白い僧院はいかに改築されたか?」という扉の一文がまず魅力的。
休暇で招待された別荘にやってきた法月警視は、一面銀世界の家の離れで殺人事件に遭遇するが、足跡は発見者のものしかないという設定で、カーター・ディクスンの名作「白い僧院の殺人」の雪の密室を髣髴とさせながら、エラリー・クイーンのように読者への挑戦状を挿しはさむという欲ばりな一冊。トリックもシンプルで優れている。
デビュー作、本書と本格派作品が続き、作者は本格派かと思いきや、以後作者の作品はどんどん変格ものに傾いていくのがとても残念。
法月氏全長編レビュー
★★★★☆
法月氏がミステリの定番、雪の上の足跡に挑んだ作品。
実にオーソドックスなテーマだが会話のやりとりの
軽妙さもあいまってなかなかの良作となっている。
トリックも目新しいものではないがしっかりとツボを抑えている。
頼子〜や生首〜のように仰々しい話よりこういう作品の方が
法月氏の良さが生かされている気がするので個人的にはおすすめ。