見たような
★★★☆☆
1996年(単行本、中央公論社)→1999年(中公文庫)→本書。
いつものとおりの樋口作品である。高校生の男の子を主人公として、身近で事件が起こり、ちょっと不思議な女の子と仲良くなっていく。
ただ、これまでの作品と良く似ているというか、自作からいいところを持ってきてまとめたというか、そんな感じの作品であった。ファンの間では評価の高い一冊のようだが、私にはちょっとそんなふうには思えなかった。
ミステリとしても物足りない。
デビュー作を、越える・・・?!
★★★★☆
はじめて読んだこの作家の本が、
思いがけず、おもしろくて、
また読んでみようと思いました。
これまたあたりでした。
前回読んだ『ぼくとぼくらの夏』に似たシュチュエーション。
謎の自殺をした少女。
その真相を知ろうと、
元恋人の主人公と、
少女の幼馴染の少女が、
彼女の周りを調べ始める。
そこで知りえたことは、
生前の彼女は、
周りから浮いているような存在だった。
それでも調査をしている二人にとって、
彼女はかけがえのない存在だった。
クールな高校生の主人公に、
魅力的なキャラクター達。
推理的要素もあり、
一気に読めました。
ライトなノベルとして、おススメです。
それにしてもあとがきで、
「デビュー作を越える」とか、
「デビュー作に匹敵する」とあるので、
次の彼の作品は、
その間の作品は、どうしようかと・・・。
雰囲気重視
★★★★☆
ミステリマニアで、最後のトリックの種明かしやどんでん返しなどを期待する性分だったのが
この作品を読んで変わったような気がする。
誰が犯人なのか、そんなことよりも主人公を始め、彼を取巻く人間が愛しく感じた。
雰囲気がとてもいい。
夏の無駄な程の暑さも、うるさい蝉も滴る汗も、この物語の中では生き生きとしている。
主人公の冷静で、偏屈な台詞も私は好きだし、こういう話し方をする17歳がいたら是非友達になりたい。
ただし、ミステリー小説での評価はそれほどでもない。
青春ハードボイルドの王道です
★★★★★
タイトルどおり甘酸っぱくもあり、ビターでもある青春ハードボイルド。
夏休みのある日。高校生の「ぼく」のところに昔の彼女が自殺したという知らせが舞い込んだ。疑問をもった「ぼく」は、彼女の友人・涼子とともに真相を調べ始める。3人は「林檎の木幼稚園」で一緒だった・・・
著者の『ぼくと、ぼくらの夏』と『風少女』を足して2で割ったような小説・・・という記憶が残っていたが、再読した感想も見事に同じ。ただ、「ぼく」の母親の職業がバナナ専門の植物学者だったり、個性的な祖父がいたり、「ぼく」にまとわりつく不思議な雰囲気の男の子がいたり・・・という面々がスパイスになっている。「ぼく」が女の子と気安く付き合うキャラクターなのも前述の2作とは違うか。さらに、涼子が「ぼく」への好意を募らせるにつれ、元彼女であった友人への思いが複雑になっていくところ。「ぼく」と涼子の微妙なやりとりがくすぐったい。
が、基本的には同じでしょう。相変らず、警察は何をやっているの?という展開だし、ハードボイルド的セリフを繰り出す「ぼく」も、ヒロイン涼子も根本のところではいつものキャラクターを踏襲。犯人もだいたい同じ方程式で解ける。しかし、それで何の不満もありません!もう偉大なるマンネリという範疇に属するでしょう。それに浸る安心感と心地よさ。初期に書かれた前述の2作よりこなれている分、新しい読者のかたには、本作がおすすめかも。
樋口さんには、いくつになっても青春ハードボイルドを書き続けていただきたいです。このままでいいので、(このジャンルでは)決して新境地など目指さないでくださいね。
暑さとせつなさがなんとも言えない
★★★★☆
真夏が舞台となっている作品ですが,特有のイヤな暑さ,
そして,そこからわき出る感情がうまく表現されています.
また,単純でもない凝ってもいない,なにげない情況なのに,
読んでいるこちらにも,その『暑さ』が伝わってくるようです.
ただ,作風なのでしょうが,主人公のハードボイルドな口調は,
高校生ということを考えると,やはり引っかかってしまいますし,
著者の別作品と,流れが似ているのもちょっと気になるところです.
とはいえ,同じ『道』を歩いていたはずの彼らを思うとせつなく,
夏の数日とともに,苦さの残る結末,読了感はなんとも言えません.