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邪恋

価格: ¥1,995
カテゴリ: 単行本
ブランド: 毎日新聞社
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 『愛の領分』で直木賞を受賞した著者の受賞第1作。長年フランスで暮らした著者だけに、優雅なフランス映画、それもパトリス・ルコントの作品を連想させるような恋愛小説に仕上がっている。ルコントはフランス映画界の中でも、男と女を美しくエロチックに描くことに秀でた監督であるが、本作もまたゾクゾクするような男女の微妙な距離感ややりとりに時間を裂くことで、緊張感あふれたエロチックな場面を浮き立たせる。まるで万華鏡のように美しく、『邪恋』というタイトルが導き出すイメージそのままに官能的で艶かしい大人の恋愛が展開する。

   母親に対するトラウマを抱え、どこか冷めた部分をもつ義肢装具士、笹森。不倫をしながらも淡々と日常を送っていた彼の目前に突如現れた、下肢を失った患者、美弥子。かたくななまでに義足を拒否しつつ魅惑的な雰囲気を漂わせる彼女に、徐々に笹森の心は傾いていく。

   しかし、笹森と美弥子の溺れゆく愛は、彼らを取り巻く世界の中で思わぬ展開を見せる。笹森の妻、美弥子の夫をはじめ、長年の愛人・麗子、そしてその兄でもあり、笹森の20年来の友人である智久の心を揺さぶり、愛憎渦巻く人間模様があぶり出される。

   本作は、下肢を失った患者がもつ「幻肢痛」がモチーフとなっている。「幻肢痛」とは「失ってしまった手足が存在するかのように錯覚する」こと。たとえば「眼鏡がないのに眼鏡のツルに触れようとする」ような感覚だ。笹森が、美弥子のかつて脚のあった個所を丁寧に、時間をかけて愛撫する描写が実に印象的だ。しかしそんな美しい幻肢とは裏腹に、本書を読み終わったあと、苦々しい幻肢痛を思い知らされることになるだろう。(中西リエ)

愛に溺れないから「邪」なのか。 ★★★☆☆
奥さんも子供もいながら、若い女性(親友の妹)と不倫関係を結んでいる主人公の笹森。

どこか恋愛にかんして冷めている、そして生きることについても冷めている。
「ついでに生きている」という笹森を評するキーワードは、特別なことではないように感じます。

自分が傷つきたくない。

だから冷めているようにしているんじゃないのかな。

精神的にも肉体的にも惹かれた人妻、美弥子に別れを告げられた時も
別れを告げられて寂しくないわけではない、
けれど心に壁をつくっていると、相手からも壁を作られる。

傷つかないわけではないけれど、その傷は浅い。自己防御ですよね。

けれど意識せずにしていた自己防御のために笹森が恋人たちにしてきたことを、
美弥子から告げられた言葉によって突き付けられます。
「冷めている」ことで、どれだけ相手を傷つけるかを。

夢のような溺れるような愛に、人は溺れきれないようになっているように思います。
それは現実の生活があるから。
現実にもどれなくなったとき、人は人として生きることに破綻するのでしょう。
愛に溺れないから「邪」なのか。 ★★★☆☆
奥さんも子供もいながら、若い女性(親友の妹)と不倫関係を結んでいる主人公の笹森。

どこか恋愛にかんして冷めている、そして生きることについても冷めている。
「ついでに生きている」という笹森を評するキーワードは、特別なことではないように感じます。

自分が傷つきたくない。

だから冷めているようにしているんじゃないのかな。

精神的にも肉体的にも惹かれた人妻、美弥子に別れを告げられた時も
別れを告げられて寂しくないわけではない、
けれど心に壁をつくっていると、相手からも壁を作られる。

傷つかないわけではないけれど、その傷は浅い。自己防御ですよね。

けれど意識せずにしていた自己防御のために笹森が恋人たちにしてきたことを、
美弥子から告げられた言葉によって突き付けられます。
「冷めている」ことで、どれだけ相手を傷つけるかを。

夢のような溺れるような愛に、人は溺れきれないようになっているように思います。
それは現実の生活があるから。
現実にもどれなくなったとき、人は人として生きることに破綻するのでしょう。

男のずるさ、女の怖さ ★★★★★
女性の心理描写、観察力、そしてストーリー展開に脱帽。
刹那的な恋愛を楽しみ、女を快楽の道具のようにしか思っていない主人公の義足技師。
親友の妹と情交を続けながら、美しい人妻に惹かれて行く。
上手いと思ったのはその人妻の描写である。女性からみると非常にイヤな女、いわゆる楚々として全て絡めとていく魔性女ーであるが、多くの小説はそんな女を男性願望か美化するのに対し、ここでは同性からの厳しい視線も描いている。
そういった人間の思いが絡みながら、主人公の女性関係を中心としながら物語は展開。ほんの少し源氏物語に通じるところもあるかもしれない、そう感じた。
ベテラン作家の力量を見た。
家庭・愛人・そして新しい愛する人 ★★★★★
著者の精神的な結びつきを大切にする静かに描く「大人の恋」が好きだったけど
この作品では肉欲的な結びつきな色が濃く描かれている。
ストーリーとしては、家庭を持ちつつ愛人宅に常に通い、その愛人の結婚を機に
新たな愛する女性と結ばれ、やがて全てを失うというもの。

この作品では主人公の職業が重要なものとなっている。
体の一部を失った患者に人口の義足や義手を作り、元の生活に復帰させること。
だけど、どんな精巧なものを作っても、失われた体が戻ってくることはないし
それは人口で作ったパーツに「慣れる」ということにしか過ぎないということ。
これを、男と女に置き換えて描いたんだと思えてくる。

主人公は、これまで関係を持った女性は、自分の心の満たされない部分を補う
もの、としてきたけど、やがてぜったいに壊れることがないと信じていた妻
にも去られ、愛人達も全て失い、自分自身こそが、愛した女性達の心のすきま
を埋めてきた単なるパーツにしか過ぎなかったんだと自覚する。
そのとき、これまではどんな状況下でも「人生をついでに生きてきた」と自負
する主人公の心に人生の冷たい木枯らしが吹き抜けたのだと思う。
どこにでもありそうな不倫のお話し ★★☆☆☆
義肢装具士という、特殊な職業を生業とする主人公。彼を取り巻く女たち。ですが、物語の中身は非常に平凡で、平気な顔で不倫に走る人々が次々登場し、それがばれたのばれないのと、アリバイ作りに奔走する姿が随所に描かれます。藤田氏の作品の中でも、非常に官能色が濃い作品です。
本気で人を愛するということ、家庭を持つということ、本来大切にすべきものを全く省みずに女性を性の対象としか見ていないない主人公に、どうしても共感できませんでした。そんな彼とつながりを持つ女性たちも、女としてのしたたかさが明らかで、好きになれません。「人間なんて本来こんなものなんだよ」というのが、作者のメッセージだとしたら、悲しすぎます。もっと、人間の奥深くが描けると思っている藤田氏だけに、この作品は残念でした。