ハッピーエンドではないが、絶望も感じません
★★★★☆
忘れがたい少年時代を持つ2人の少年と1人の少女
別れて長い月日がたってから彼らの人生は再び交錯する
主人公の辰村が身をおく広告代理店を主舞台に、
広告業界の熾烈な競争、内部の人事抗争などを織り交ぜながら、3人を再び引き合わせた事件は終幕を迎える
最後まで一気に読ませます
広告業界の内情を上手く取り入れ企業小説としても良くできていると思います
暴力的衝動を内に抱える主人公、互いに恋心を持ちながらかなうことの無い主人公と暗い過去を持つ幼馴染の重役婦人の関係など
藤原さんらしいちょっと暗い設定はかわりませんが、テロリストのパラソルにも登場した浅井の存在により
裏社会とのかかわりが納得いくものに描かれ違和感を感じさせません
幼馴染の浜井、若手社員の戸塚・・・・決してハッピーエンドではない藤原さんらしいストーリーが展開します
それでも読後に絶望は感じません
藤原さんの作品の中では最も多くのかたに納得いく作品といっていいのではないでしょうか
藤原伊織ゆえ星4つ
★★★★☆
作者が藤原伊織でなければ星5つとしたところだ。
しかし、藤原伊織のクオリティはもっと高いはず。
物語のいくつかの柱がもっと密に絡み合うことを期待したのは、厳しすぎるか。
なんかあっさりしかもきれいにまとまりすぎたという気がする。
とはいえ、エンターテイメントとしての出来は無論いい。
人物が書けているから、多少の強引さもそんなに気にならない。
非常に引き締まった小説である。
老若男女を問わずおすすめの小説である。きっと楽しい時間となるはずである。
溜飲が下がらない
★★★★☆
冒頭シーンからラストにいたるまで、緊張感と疾走感を失わず一気に読ませる力作であると思う。
主人公辰村の過去と広告業界の内幕の絡ませ方も、申し分なく面白かった。
ただ、藤原作品を読んでいつも思うことだが、ラストを余韻ととるか後味と取るかで微妙に評価が分かれるのではないかと感じた。
辰村の期待に、驚異的な努力で見事に応えて見せた戸塚青年の処遇に納得できない感が残ってしまったのが非情に残念だった。
読み終わって、よかったとホッと感じられるものがあってこその余韻ではないのだろうか。
今回に限らず、藤原作品のラストには微妙に溜飲が下がらない感がのこることが多い。
この作品も評価は文句なく星5つとしたいところなのに、ラストの後味が今ひとつすっきりしないせいで一つ脱落してしまった。
男の理想像
★★★★★
テロリストのパラソルをはじめ、著者の書く主人公は格好いい。男がこうありたいと望む理想像だ。
物語中の言葉にも考えさせられるものがある。
・背筋を伸ばせ胸を張れ。
・職業に貴賤はないがプロと素人はいる。
・省略とは重要な能力。
・満足に自己満足以外のものがあるか。
・やっかいに利息はつきものだが複利のケースがある。
広告業界を題材にしたビジネスのやり取りも、スピード感があって楽しめた。力作である。
そうか。そういう男か。そら良かった
★★★★☆
大東電気のプレゼンの準備を進める中、もうひとつの大手取引業者「オードリー化粧品」のCMタレントの不祥事が起こり、立花部長はそちらの専任と成らざる得なくなる。
辰村は幼馴染の勝哉を自分で探しはじめるが、途中で思わぬ障害が入る。
部下の戸塚は目覚しい成長を見せはじめる。
社内に怪文書が流れるなど、次々と障害が入ってくるなか、京橋十二営は大東電気のプレゼンテーションの準備を進める。
競合のプレゼンテーションだけでもワクワクする展開があるのですが、辰村の幼馴染の行方、そして、社内の派閥人事のよこやりなど、次々と話が展開して最後まであきません。