内容は、自分自身や相手の心を理解するための観察プロセスをいくつかのステップに分ける単純なモデルを採用し、これに沿って述べられている。このモデルの観察プロセスは「取り込み」、「意味づけ」、「意義づけ」、「反応」の4つの主要な部分に分けられている。
1章 「取り込み」では、「正確さ」をキーワードに、具体的な観察方法を述べている。貧弱な観察が原因で起きる失敗例を取り上げ、なぜ失敗が起きるか、その理由を解説している。2章「意味づけ」でも「正確さ」をキーワードに、取り込んだデータに対し、その意味づけプロセスのさまざまな側面を検討している。いくつかの事例を紹介し、ささいに見えるデータからどれほど多くの意味が抽出できるかを述べているのは大変興味深い。3章「意義づけ」では、「関連性」をキーワードに意義づけの抽出について、第4章「反応」では、「有用性」をキーワードに、適合的反応――思考から行動への翻訳がどのようにモデル化されるか――について述べている。そして最後の5章では、高品質ソフトウェアの品質管理をはじめる際の必要最小限のステップを記述している。品質管理の改善に興味のある管理者におすすめしたい。(大塚佳樹)
他のワインバーグの本と同様、一見、軽妙な語り口で興味を喚起しながら話は進んで行きますが、読むのをちょっと中断するなど、一回筋から頭が離れてしまうとその世界に戻るのはけっこうたいへん。一気に最後まで読み通してしまうことをお勧めします。
ソフトウェアの開発にこういった人間の認識に関する基礎理論まで適用して理解を深めるのがワインバーグの知性だと思いますが、ついていくのは相当苦労します。ただ、毎度のことですが、その苦労まで含め、彼の著作に脳細胞を活性化させてもらえました。こういう先人!!の著作が読めることに感謝します。