外国語学習の魅力や在り方を感じることができる本
★★★★★
本書は、白水社の「地球のカタチ」シリーズの一つとして出版された
ものであり、中高生等の初学者を主なターゲットに、外国語の魅力を
たっぷりと紹介したものである。
著者らしい堅苦しくない文調で、比較的大きなフォントでほとんどの
漢字にはフリガナも添えられていて、とっつきやすい工夫がなされて
いる。
昨今、ともすると「英語至上主義」的な考え方が一部にあったりするが、
この本を読むことで、そのような考え方は本来の外国語学習の在り方
とは違っていることを改めて感じることができる。
そして、文字にしろ文法にしろ音にしろ、違いがあるからこそ、その
「にぎやかさ」が面白いという外国語学習の魅力を感じさせてくれる。
特に外国語学習を始めたばかりの方にとって本書は、外国語学習の
楽しさや在り方を「気軽に」感じさせてくれると思われる。
肩の力を抜いてどうぞ。
ちょっと中途半端な気もするが、ともあれ面白い一冊
★★★★★
ロシア語および東欧諸語の専門家として知られる黒田氏のエッセイ。
氏のエッセイには外れがないので迷わず購入。
しかも、外国語全般に関する本ということで、氏の外国語に関する深い教養がいかんなく発揮されているだろうと、期待して読み始める。
ただ、すぐに違和感を感じる。
どうも本書は、
「超初心者」(おそらくは中高生くらい?)
に向けられているらしく、とにかくカンタンに書くよう義務付けられているらしい。
そのためか、ファンにはなんとなくバカにされているような、物足りない感じなのだ。
だからといって中高生に面白いかというと、それはそれで少々敷居が高い気もする。
つまり、初心者には敷居が高く、ファンには物足りないという中途半端な位置にあるような気がするのだ。
ただ、そこは黒田氏。
だんだんと調子が上がってきて、やさしい語り口の中にも鋭い視点が垣間見えてくる。
終わってみれば、やはり得ることの多い一冊だった。
次回は本当に縦横無尽に、言語の世界を遊びまわるような作品をぜひ。
小中学生の読者に「言語っておもしろそうだ」と感じさせる書
★★★★★
表紙を繰るとまず目に入るのが著者のプロフィール紹介文です。そこには私と著者との間の共通点がいくつか書かれていました。
私も著者も1960年代前半の生まれ。外国とはまったく縁のない環境で育ったにもかかわらず、小さいときから外国語が大好き。中学のときに(NHKの)語学講座に熱中。そのせいか学校の成績はイマイチ伸び悩む…。
そんな私によく似た著者の著作をこれまでもいくつか手にしてきましたが、今回の書は一段と平易に、「言語」というものはどんなところが面白いのかを綴った読み物に仕上がっています。
アルファベットのみならずハングルやアラビア語、ヒンディ語やタイ語の文字。外国語の様々な発音のお話。数の数え方に単数・複数だけではなく双数という概念を持つ言語の話。ロシアやハンガリーの人名の話。ひとつの国に複数の言語が存在するスイスの話などなど、エキゾチックな話題が満載で、興味の尽きることがありません。
そしてこの本の文体はまるでおとぎ話の口調のよう。
チェコ語など、多くの人が一生かけても縁がなさそうな外国語が登場しますが、著者は「細かいことはどうでもいいんです」「怖れることはありません。それでいいのです」といった具合に読者を安心させようとたびたび努めています。
また漢字表記にはほとんどすべてルビをふってあります。
著者がこの本を子どもに向けて書いたということが随所に見て取れるのです。
ですから本書の内容は、言語学の知識をある程度持つ外国語好きの読者には物足りなさが残るでしょう。それは仕方のないことです。むしろ身近にいる若い世代、おそらく中学生や、ひょっとしたらまだ英語すらほとんど学んだことのない小学生高学年の読者に、この書を勧めるのが外国語好きの大人の役割ではないでしょうか。
そんなつもりで私自身は今この書評を書いています。
中高生にぜひ!
★★★★★
外国語の本ではすっかりおなじみの黒田氏。今度の本は白水社の「地球のカタチ」シリーズの一環という形のようです。おそらくシリーズ全体の方針なのでしょうが、ルビが振ってあり、文字も大きく、またこれまでの本に比べ語り口がかなりやわらかめ。黒田氏お得意の洒落のきいたキビシイ発言に痺れていた自分としては少しだけ残念でしたが、語りかけるような口調なので本嫌いの中高生にもすんなり読めると思います。また、語り口がやわらかいと言っても内容は相変わらず濃い。たくさんの図版を使って、聞いたこともないような「不思議」な外国語を分かりやすく楽しく取り上げています。とにかく、「外国語って何だか面白そうだぞ」と思わせてくれるには十分な本ですし、これまでの学校教育の関係上「英語が一番偉いんだ」と思っていた人々には世界の言語、ひいては文化の多様さを垣間見るいい刺激になるでしょう。読んでソンはありません。