偽王がついに
★★★☆☆
「フェンネル大陸偽王伝」の第5巻。
ようやく導入部の終わりである。「偽王伝」の意味が5巻にして、やっと明らかになるのだ。つまり、本書でやっと入口にたどりついたということになる。いったいどれだけ壮大なストーリーになるのだろうか。この先を思うと呆然とする。
正直、読み進めるのがつらくなってきた。原因は著者があまりにも読者へのサービス精神に欠けるためである。ストーリーは停滞して先が見えないし、人物にしても舞台となる国々にしても、あまりに多様でバラバラすぎて、きちんと把握することが出来ない。個々の文章にしてもそうで、説明不足で良く分からない箇所が多すぎる。もっと読者のことを考えて書いてくれないと、ついていけない。
最初は期待したシリーズだったのだが・・。
ささやかなターニング・ポイント
★★★★☆
これまでのところ、フェンベルク達の行動は局所的な変化をもたらしてきたが、世界の潮流の前ではその影響は微々たるものでしかなかった。しかし今後はこれまでバラバラだった影響が結び付いて大きなうねりになる、そういった風向きの変化を予想させる内容です。
筆者は先を見越して執筆しているようで、今巻では田舎の国にてのフェンベルク達の束の間の休息を描写して和やかな雰囲気を演出し、然るのちにシリーズの核心に触れる部分を持ってきていて、そのコントラストが鮮やかです。
ところでこのシリーズは“王道ファンタジー”と銘打たれているが、ところによっては“高里椎奈の”が頭につくので、この場合、正統的とか典型的なという意味合いではなく、あくまで筆者が考える“王道ファンタジー”であるということではないでしょうか。更に言えばフェンベルクは故国ストライフを追われラークスパー、ソルド他いろいろな国を転々とし、ゆく先々の指導者や統治形態とその結果民はどういう暮らしをしているか、を直に体験します。そして王はどう在るべきか、について思いを巡らせます。この展開から考えるに「王道;儒家が理想とした仁徳に基づいた政治形態」という意味も“王道ファンタジー”という言葉に込められているのではないかと思います。
第5弾・シリーズ名の「謎」
★★★★★
第5弾にして「偽王」たちました。シリーズの謎、こういう経緯で偽王と名乗ることになったとは。
ながい序章?いえいえこれでも全貌が明らかになったわけではありません。二作目の終わりから旅の使者という体裁で動いているフェンでしたが、今回はフェン、ロカ、リノそれぞれ御一行の三元中継。それだけに分厚いのですが実は結構かなりダイジェスト。時系列は問題なし、むしろうまい。3つのストーリーでそれぞれ「偽王」に気持ちが向かう瞬間の描写には定番ながら抑制の効いた筆致にハマりました。
人物たちはまだまだ読み込みが必要なのか書き分けが不明瞭、完璧に網羅したら既に10冊は刊行されている筈。