豊臣・徳川の政権交代ドラマへの新視点
★★★★☆
これまで十分以上に語られた感のある関ヶ原、大坂の陣であるが、本書は綿密な史料批判と考察から、数々の新知見を打ち出し、新たな歴史像を我々に突き付ける。
豊臣政権に終止符が打たれ、江戸時代の開始を決定づける関ヶ原、大坂の陣についてだが、「関ヶ原直後、ただちに徳川の覇権が確立したわけでない」「方広寺鐘銘はいいがかりではない」「大坂の陣で徳川は豊臣を陥れたわけではない」など多岐にわたり、我々の常識的観念の書き換えを迫る。緻密な考察からは、当時の人物の心理がびりびりと伝わってくるようだ。関ヶ原の大阪の家康の心理を思うと、彼の味わったスリルさえ追体験することができる。