安定した面白さ
★★★☆☆
ナポリの下町で天才的な仕立て屋の技を揮う織部悠のお話も、かなりの長編になってきました。
さすがに、それが16巻ともなると物語がまた大仕掛けになってきました。これまでも、たびたびオリベの腕前は、イギリスはジョンブル御用達のサヴィル・ロウや、フランスの老舗からも狙われてきました。最初の出会いがまずかったが為に正式に獲得にはこないもののナポリに進出しているジラソーレ社からも、常に高給で助っ人仕事に駆り出されています。
そんな悠ですが、今度はイギリス、フランス、イタリアを巻き込んでの新ブランドたちあげの職人引き抜き騒ぎに巻き込まれてまたまた渦中に投げ入れられてしまいます。なんだか中期の「美味しんぼ」を見るような感じで、服を仕立てるだけですべての難問を解決しなきゃいけない悠にちょっとだけ同情してしまいます。そして、ちょっとだけ話に無理が出て来ているなぁとも思います。
ただ、この物語の面白さは、そういう筋立てだけでなく、その蘊蓄が面白いところにもあるので(そのあたりも「美味しんぼ」に似てもいますが、ただ「美味しんぼ」のような押し付けがましさがない所と楽しいトリビアであるところでこちらの方が好みです)、マンガとして読めば安定した面白さはあいかわらずきちんと提供してくれています。
例えば今回の巻の中ではイギリス人の、午後の紅茶の時間の由来や意味等も当時の生活スタイルからきていることとしてなるほどと腑に落ちましたし、スコーンにつける生クリームとクロテッドクリームの差もばっちりわかりました。←まぁ、知ってる人は知ってる話かも知れないけれど。
ともあれ、この漫画を読むと服について無頓着な自分ですが、いつかいい服を仕立てたいな等といつも思うのです。普段は雑な生活をしているだけに、少しゆったりとした気持ちでそういうものを欲しくなるというのもたまにはいいものです。
旅先のこと
★★★★☆
じっくりと腰の落ち着かない旅先でのエピソードが多い。それだけに機知に富んだものになっている。機転が利くかどうかは、旅先での重要な要素だろう。登場人物が増えるにつれ、人間関係が複雑になってくる。本当はもっとシンプルでも構わないと思うのだけれども・・・・・・
ロンドンの老舗の分裂騒動に巻き込まれる新展開へ・・・
★★★★☆
収録内容
order92 放蕩息子の帰還
過去の悠の物語(マルコ達と出会う以前)、客の依頼で辺境の島を訪れた悠だったが・・・(確かに昔の織部を感じさせるけどもっとやさぐれていたよーな・・・)
order93 帝釈天の肩
日本でバカンスを楽しんで?いたモニカ達の前に海外営業担当のジュリア(新キャラ)が現れて・・・(本当に個性的なキャラが多いですねジラソーレ社って・・・)
order94 鶴の恩返し
あいもかわらず忙しいジラソーレ社、ロンドン支店長クラリッサ(新キャラ)が応援に来ていたのだが、またも社長が飛び入りの仕事を受け入れて・・・(オチがいいですね)
order95 改革の痛み
悠の下へサヴィルロウのパウエル親方が訪れたのだが、その目的は・・・(グレた?ラウラに注目(笑))
order96 プロセルピナの略奪
老舗の分裂問題にセルジュの兄が絡んできて・・・(エレナちょっとだけ再登場がうれしかったな・・・)
order97 午後のお茶
クラリッサへの強引なアプローチを始める新星ギルレーズ・ハウスに対抗するためにロンドン支店は独自のコネクションを構築するために人気作家にアポを取って・・・(う〜んイザッベラの人脈って・・・)
ジラソーレ社のメンバーって本当に個性的なキャラが揃っていますね。(一番のお気に入りはベアトリーチュ(笑))
それにしても今巻の最後に登場した老舗の本家であるチーフってピザ屋のおやじにかぶっているよ〜な・・・