ヘッセの日常
★★★★★
デミアンも車輪の下も愛と知もシッダールタも素晴らしいが、個人的には今まで読んだ中で一番好きな本だ。彼の日常、思想や人柄が伺えて文豪ヘッセがとても身近に感じられる。晩秋の熟成された日常の細かな描写が本当に本当に素晴らしく、他の作品を読む時は先を急いで一気に読んでしまうが、この作品は数ページ読むごとに本を閉じてその温度を感じずにはいられない。内容そのものというよりは言葉の束が呼び起こすある種の感情は他に類を見ない魅力がある。翻訳で多くが失われてもここまで感じる事が出来るとはどういう事だろうかと少し不思議に思う。いつか原文も読んでみたい。
ヘッセの仕上げに
★★★★★
いままでヘッセの作品を読んだことのない人にはお勧めしません。
ヘッセの晩年の短編集でもあり、作品の中には過去の自分の作品を振り返っているところもあります。
なので、「車輪の下」や「デミアン」を読まれてからのほうが、楽しめると思います。
それでも、ヘッセの素直・素朴でノスタルジックな世界は満載されている作品ですので、
お勧めには間違いありません。
等身大のヘッセ
★★★★☆
湯治手記:「悟りを開いた」、と思う時期が誰にでもある。そんな一人の若者(読者)との出会いに関するヘッセのちょっとした回顧録。ヘッセの本に出てくる主人公は濃くてすごいですが、長い人生、現実にそんな風に生きられる人は少ない。その「差」を感じさせる、生身のヘッセが見られる本。
穏やかで味のある作品
★★★★★
ヘッセの晩年の短編集というだけあって、穏やかで優しい秋の木漏れ日のような作品集です。どれもしみじみとしてじんわりと心に染み入るような味わいがあります。タイトルにもなっている『幸福論』は難しい哲学的なものというより、暖かい趣を感じさせるより感覚に訴える作品です。難しい事は考えず、小さい頃に物語を聞かせてもらったような感覚で読める本です。
高橋健二さんの訳がいい!
★★★★☆
ヘルマンヘッセの短編集です。「盗まれたトランク」でほのぼのとさせられ、「小がらす」を読んではなぜか哀しくさせられ、いろんなtasteでこの本を味わえます。改めて、ヘッセの才能と感受性の鋭さを痛感させられました。